黒の宴 15 - 16


(15)
それでもまだその時は強い自制心をアキラは残していた。スッとアキラが体の力を抜いた。
社はそんなアキラに対し、掴んでいたもう片方の手も離して両手でアキラの頬を優しく包もうとした。
その時アキラが渾身の力を込めて社を突き飛ばした。
「うおっ」
後ろによろめいた社の体の脇をすり抜けてアキラは和室から出た。だが何かに躓いて
床に膝まづくように倒れる。社のスポーツバッグだった。
アキラはすぐに立ち上がろうとしたがグッと首に後ろから腕を回され捕らえられてしまう。
そのまま後ろに引き倒され、和室に引きずり込まれて社の大きな体が上にのしかかって来た。
「誘ったのはそっちや…!」
アキラの行動は僅かでも隙を見せればせっかくの獲物を逃してしまうという判断を相手に
させてしまった。社はアキラの体の上に覆いかぶさるように上半身を乗せて押さえ付けると
アキラのズボンのボタンを外しファスナーを下げた。
「あっ…!」
アキラは必死で両手で社の学生服を引っ張ったが抵抗し切れそうになかった。
それでも社の下から逃れようともがき、暫く畳の上で揉み合っていたが、社の体力にはかなわず両膝を
抱えられると一気にブリーフごと引き剥がされ、そのまま両膝の間に社の体を入れられてしまった。
社は剥いだ衣服を部屋の奥の片隅へ投げた。
上は、まだPコートを着たままであるのに下肢は剥き出しの状態で両手を床に押さえ付けられた。
「これでちょっと部屋を飛び出す、というワケにはいかなくなったな。」
そして社は少し上半身を浮かせて自分の体の下にあるアキラの下腹部を見る。
先端がこちらを向いた状態のアキラの薄桃色の先端部分が視線に怯えるようにピクリと震えた。


(16)
「上も下も、カワイイ顔しとる…」
社は再び顔を近付けるとアキラの唇を奪い、そうしながら片手で自分のズボンのベルトを外し、
ファスナーを下ろす。
「ん…っ!?」
唇を塞がれたままアキラは目を見開いた。そして次の瞬間、苦痛に眉を顰め目蓋を強く閉じる。
「んんー…っ!!」
社は片手でアキラの片手を押さえ、片手でアキラの左足を少し抱えて自分自身をアキラのまだ何の
準備も出来ていない谷間の奥の入り口に押し当てて来ていた。
押さえようのない火が点いているのは社の方だった。
具合の良い角度を探るように自分の体芯でその周辺をなぞり、力を入れ、無理そうだと
分かると離れる。そうしてまた微調整をして再度侵入を計る。
挿入まで手の込んだ前戯を加えて来た若手棋士の連中と違って社はまず杭を打ち込む事を
第一に選んだ。美しい獲物を逃さないために。
社のその部分の先端はアキラの方に潤いがなくても事足りる程にぬらぬらと体液をまとっていた。
無謀かと思えた社のもくろみは今のアキラに対しては抗力を発揮した。
火を求めるアキラの体の奥が、直接的にその部分を責められた事でアキラの中の理性の壁を
弱めてしまった。拒絶しきれない。
位置を決めかねて動いていた社の腰がやがて止まり、ゆっくりとアキラの中に沈められていく。
塞ぎあった互いの唇の隙間からどちらのものとも言えない、熱い呼気が漏れる。
高熱の杭が、それを望んでいた部分にギリギリと差し込まれて来た。



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