遠雷 22
(22)
響きのいいバリトンが尋ねる。
「どうして欲しい?」
アキラは答えた。
「痒い………」
声がでた。久しぶりに聞く自分の声に励まされ、アキラはさらに続けた。
「痒い、痒い、痒いんだ。掻いて、どうにかして…助けて!」
「私でもいいのかな?」
「だ、誰でもいいから、早くどうにかして!」
叫ぶように嘆願の言葉を吐きながらも、少しでも痒さから逃れようと、アキラは足を擦り合わせ、腰を盛んに揺らしていた。
「私の好きな方法でいいんだね?」
「いい、いい、いいから、早くっ!」
語尾は悲鳴に飲みこまれる。
痒くて痒くてたまらなかった場所に、灼熱の杭が打ち込まれた。
アキラはそう思った。
体の奥深くに深々と突き刺さる、熱。
あぁぁぁぁぁぁぁぁぁ――――………!
それは間違いなく悲鳴だった。
だが、その根底には、甘い響きが潜んでいた。
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