黒の宴 22


(22)
社はホームまでアキラを同行させた。
アキラの中性的な容姿を良い事にまるで恋人同士のように肩を抱き、新幹線のドア付近で
発車までの間の包容を楽しんでいる。
他にもにたような別れを惜しむカップルがホームに点在し誰も特にこの二人に
注意を向ける者はいなかった。
普通席のチケットをあらためて購入した社は座席を確保する事など二の次に、少しでも
長くアキラに触れている事を選んでいた。
「またすぐに上京する…そん時は…」
発車を知らせるベルが鳴り始めた。
「…またお前を抱く…」
ほとんどのカップルが軽く交わす程度のものですます中、社はアキラの唇を深く長く味わい、
アキラの唇を指で辿り、アキラの黒髪を指で梳いた。そうして車中の人となった。
社が離れてすぐにアキラは階段の方へ向かおうとした。
「…やっぱり男の子同士なんじゃないの?ホラ、」
あまりに濃厚なラブシーンに思わず足を止めた女性同士がひそひそ話すのが聞こえて来た。
足早にそこからアキラは立ち去った。
動き出した新幹線のドアの窓か見つめ続ける社の視線から逃れるように。
「手に入れたる。北斗杯の座もあいつも。全てオレのもんや…」 
窓の外に様々な色に溶け合う街の光の向こうに社はまだ手や体に生々しく残る
アキラの声や肌の感触を思い返していた。



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