遠雷 25
(25)
芹澤は、アキラの左手を掴むと、自身の怒張に導いた。
「これで、擦って欲しいのだろう」
アキラはこくこくと小さく頷いた。
「じゃあ、言ってごらん。これはね、ペニスというんだよ」
アキラが言葉の意味を正しく理解していたかは、はなはだ怪しい。
だが、本能に支配された彼は、右手で後孔を犯しながら、左手の中にあるものを軽く握り、その熱と堅さを確かめると、ぺろりと舌先で自分の唇を舐めたあとで、懇願を言葉にした。
「この、…ペニスで、僕の。痒いところを……擦ってください」
「どこが痒いのかな?」
「お尻の中……」
その願いはすぐにかなえられた。
芹澤の熱い昂ぶりが、アキラの内部を隅々まで満たしていた。
彼の性器は、太さは並だが、長さがある。根元まで押しこめば、S字結腸まで届く。
そんな逸物が大きく抽送されるたび、アキラの内臓は激しく責められる。
普通なら、初めてでここまでされては、快感を覚えるどころではないだろう。
だが、催淫剤によって感覚を操られているアキラには、すべてが快感として認識された。
芹澤の熱いペニスだけが、アキラをあの気の狂いそうな掻痒感から救ってくれる。
だから、アキラは全身で縋りつく。
本来なら憎んで余りある陵辱者を、ただ一人の救い手と錯覚し、本能だけで縋りつく。
「いい……、いい…よ………、もう、ん、…痒くな…い……
はっ、ぁ…ぁ……、気持ち…いい……」
「もう痒くない?」
救い手の囁きにアキラは可愛らしい仕草で、頷いて見せる。
「じゃ、やめようか? やめたほうがいいね?」
「やだ……」
短い答えは、熱い吐息混じりのものだった。
芹澤は、喉の奥で楽しそうに笑った。
「嬉しいよ、アキラ君、私もまだやめたくはない。
君の奥は、熱く蕩けて、私を締め上げてくる。最高だよ」
アキラは芹澤の言葉に微笑んだ。なにを言われたのかは、わかっていない。でも誉められたことは、ぼんやりと理解できたのだ。
「君に最高の快楽を教えてあげるよ」
芹澤は、楽しげに囁くと、アキラの膝に手を置き、楔を打ち込むように腰を使うのだった。
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