遠雷 28
(28)
全身に染み渡る快楽に、アキラは身を任せていた。
吐精の瞬間は、神経の爆発だ。
体中の至る所に、発火装置が仕掛けられていて、それが次々に連鎖して弾ける。
ぐったりと力を無くした体が、時間差でぴくぴくと痙攣する。
それがまた快感を煽る。
蟻地獄に足を取られてしまったように、逃れる術が無い。
しかし、薬の作用で淫蕩に染められた肉体は、逃れる必要性を思い出すはずが無かった。
そんなアキラを煽るように、男は尿道に残る精子すら搾り出す勢いで吸い上げる。
チュルッという音が、体の中で響く。
「はぁ………」
淫らなため息。
男は萎えてしまったペニスを、執拗に嬲る。
先程までの射精に導くための激しいものとは違う。
舌で舐り、唇で甘噛みし、頬肉で撫で上げる。
射精の余韻を引き摺っていたアキラのペニスは、快感を隠さない。
男の舌の上で、また育っていく。それが嬉しいと、犬の呼称を受け入れた男は、若い欲望に舌を絡めていく。
芹澤は、アキラの媚態と男の痴態に目を細め、己の陰茎をゆっくりと抜いた。
それがまた刺激になったのだろう。アキラの全身が大きく震えた。
「三度目も遠くないな」
嘲笑めいた言葉を、聞く者はいない。
芹澤が、前を寛げただけのスラックスと下着を脱ぎさると、ジム通いで鍛えた全身が、白熱灯の柔らかい光の元に顕になった。
無駄な脂肪のかけらも無い、綺麗な筋肉に覆われた体だ。
まともな状態のアキラが見たならば、手筋に似ていると思ったのではないだろうか。
濡れそぼる陰茎をサイドテーブルに置いてあったタオルで拭う。
勢いはいささか失われていたが、萎える気配は無い。
もっとも、続けて上がるアキラの嬌声に、刺激されていては萎えるはずも無かったが。
芹澤は、テーブルの抽斗から鋏を取り出すと、なめし皮に刃を入れた。
金属のスライドする心地のいい音が、アキラの最後の拘束を解いた。
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