遠雷 32


(32)
逃げ出せるものなら逃げ出したい。
そんな意識が一瞬浮かぶ。だが、それが無理だということも、アキラは身をもって知っていた。
いまもし、ここに一人でいるのなら、アキラはとうに自分の後孔に指を捻じ込み、掻き回していたことだろう。
それでも届かないことは知っている。
棒切れでもなんでもいい、指より長いものがあるならば、躊躇いなく挿入しこの痒みをどうにかするだろう。
人間としての恥じらいが戻りつつあるいま、これは間違いなく拷問だった。
「塔矢君、ここでやめても私は一向に構わないのだよ」
芹澤は苦しそうに息をつくアキラの表情を堪能しながら、脇を支えていた右手をしたにおろし、ぴしゃりと小さな尻を叩いた。
「ああ!」
痛みに挙げる声ではない。
アキラは膝を交互に動かし、目的の場所に近づいていく。
芹澤もそれに迎合し、腰をずらした。頃合のところでアキラの体を後ろに倒すようにして、膝に座らせる。
「膝立ちでは無理だよ。ちゃんと私の体を跨ぎなさい。
そうそれで立ち上がるんだ。中腰の姿勢で。そう、そうだ。いいぞ」
言葉をかけることで、いま自分がどんな姿勢を取っているか、考える隙を与えない。
「君は初めてだからね。少しだけ手伝ってあげよう」
そう言いながら、芹澤はアキラの細い腰を左右から掴む。
「そうだ。そのまま腰を下ろしてごらん」
言われたまま、ゆっくりと沈めていく。
弾力のある熱い感触が、過ぎた刺激で腫れ上がってしまった入り口に触れた。
火傷しそうな熱に、瞬間、アキラの腰が逃げる。
が、芹澤の手がそれを許すはずがない。
「やめるのかな?」
アキラは歯を食い縛ると、もう一度腰を下ろした。
再び感じる熱に、全身に戦慄が走った。しかし、ここでやめるわけにはいかなかった。
さらに腰を落とす。が、芹澤の陰茎はぬるりと逃げてしまった。
「あぁ――!」
癇癪を起こした子供のように、アキラが鋭く叫ぶ。



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