遠雷 34


(34)
「う、う…う………」
芹澤の長尺を最奥まで受け入れて、アキラはしばらくの間身じろぎひとつできなかった。
苦しい呻きだけが、食い縛った歯の間から漏れてくる。
生々しかった。
自分の内部で、どくどくと脈を打つ芹澤の熱に、アキラは身震いした。
水から受け入れたという事実が、アキラを苛む。
だが、これが終わりではなかった。
挿入の刺激で遠のいていた感覚が戻ってくる。
芹澤の淫茎を飲みこみ、一杯に広げられた腸壁に、あの忌まわしいむず痒さがじわりじわりとよみがえってくる。
「う……、あっ…くぅ………」
アキラは芹澤の肩に手を置いたまま、狂ったように頭を振った。
どうすれば、この虫の這うような感覚から逃れられるのか、わかっていた。
だが、それをすることに抵抗があった。
どうして自分から進んで、……そんなことを………。
だが、痒みは徐々に募っていく。芹澤の肉塊が発する熱が、煽っているかのようだ。
アキラの頭がかくんと後ろに落ちた。
意識を失ったのかと、芹澤はあくまで冷静に、今宵の獲物を検分する。
腰と背中をそれぞれ支えていた手で、左右から頬に触れ、顔を起こす。
半眼の瞳に力はなかった。焦点が合っていない。
気をやったのかと、下に目をやったが、萎えかけてはいたが逐情の痕跡はなかった。
舌先で、ぺろりとアキラの唇を舐めてやる。
ぴくりと首の筋が動いた。意識はあるのだ。
盛んに頭を振りたてた為、脳貧血に近い状態なのだろうと、芹澤は見当をつけた。



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