遠雷 36


(36)
「まずいな」
誰に聞かせるでもなく漏れた言葉。
「私のほうが持っていかれそうだ」
半ば意識を飛ばしたアキラの内部は、むず痒さから逃れるために絶え間なく蠢いていた。薬効もあり、通常よりも熱くなっているそこは、滾る坩堝のようだ。
そして、視覚を刺激する媚態。
「これほどとは……、思わなかった………」
丹念に内部を探りながら、泣き言じみた言葉を口にしたとき、犬の身分に甘んじる男が、柔らかいタオルでそっと芹澤の額の汗を拭った。
芹澤は、苦笑した。
犬と罵る相手に、気遣われた自分が滑稽だった。
一つ大きく息を吸い、呼吸を整える。
天才の名をほしいままにする囲碁界の若き貴公子は、この行為の最中にも、圧倒的な存在感を見せつける。
芹澤の心に、不思議な諦観が芽生えたときだった。
アキラが絶叫した。
叫びすぎて掠れてはいたが、それは絶叫だった。
「見つけた」
芹澤はにやりと笑うと、もう一度いまと同じように腰を動かしてみた。
今度は芹澤にもわかった。わずかに固いしこりの存在を。
「やぁっ―――――――――――!」
芹澤は、腰を止めた、だが、これこそが誘い水だ。
動かない芹澤に焦れたのか、ただ置かれていただけのアキラの腕に、力がこもった。
力なく投げ出されていた両足が、芹澤の腰を挟んだ。
アキラが身を起こす。それすら内部では刺激になるのだろう。
「ふっ…ん」と悩ましげに息を吐いた。
アキラは、芹澤の首に腕を巻きつけるようにすると、自分の内部でいまだ勢いを失わない芹澤の怒張に、自らを蹂躙させるため、動き出したのだった。



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