遠雷 40


(40)
「どこが感じているのかな?」
「……どこ?」
アキラはすぐには答えられなかった。
あらゆる刺激が一つの快楽を紡いでいるのだ。答えられるはずがない。
それを理解したのか、芹澤が質問を変える。
「どこが熱い?」
「お腹の中が……」
「なぜ?」
「熱いので、一杯…なって……るから……」
怪しい口調ではあったが、正直な答えだった。
「いい答えだ」
芹澤はそう言うと、小刻みに腰を動かし、新たな疼きを掘り起こす。
「あん、あっ……ん……」
いまのアキラには、声を抑えようという意識すら働かなかった。
指の先にも心臓があるのではないかと思えるほど、全身が脈を打つ。それすら、甘い刺激だった。

―――――自分ではない自分に作り変えられていく。

そんな不安が、心の片隅にあった。
だが、それはなんとも甘美な不安だった。
その不安があるから、いま自分を支配する快楽が絶対的なものに思えてくる。
芹澤が閉じていた足を開いた。自然アキラの足も大きく開かれ、結合がさらに深くなる。
乳首が下から上へ擦り挙げられ、芹澤の長い指がぽろぽろと涙を零すペニスを爪先で弾いたとき、アキラに体の芯まで溶かすような絶頂が、また訪れた。
「あっ、あっ、あ―――――――――――……」
アキラは、掠れた声で叫んでいた。
脊髄を走り抜ける電流にも似た快感。それを全身で味わっていた。



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