遠雷 41


(41)
アキラに少し遅れて、芹澤もまたアキラの中に熱い白濁を叩きつける。
それでも、獣と化した二人はすぐに動きを止められない。
尿道に残った最後の雫も吐き出そうと、体を揺すり続ける。
そうこうするうちに、ぬぷりと音を立て、力を失った芹澤の淫茎が抜け落ちた。
肉栓をなくしたそこから、どろりと溢れ出す欲望の残滓。
芹澤が口を開いた。
「おい」という短い号令で、従順な"犬"が這いつくばるようにして近づいてくる。
「……」
アキラが何事か囁いた。が、それは荒い呼吸にかすかな音が乗ったものでしかなかった。
「なにかな?」
「あの人にも……犯されるの?」
「まさか」芹澤は即座に否定する。
「もっとも君が犬に犯されたいというのなら、とめはしないが?」
アキラはけぶるような睫の下で、男をじっと見つめていた。
芹澤の足元で、男は動きを止め、次の命令を待っている。
「塔矢君、君を私だけの"犬"として躾てみたいとは思うよ。だが、過ぎた願望は身を滅ぼす元だと私は知っている。調教しだいでは、獅子の仔に"犬"の真似事も強要できるだろう。でも獅子は獅子。私は滑稽な調教師にはなりたくないんだよ。愚かな調教師にもね」
それが芹澤の美学だった。
なるほど、生い育った獅子が、犬のように芸をするのは可愛いだろう。
そこまで飼いならした調教師に、観客は惜しみない賞賛の拍手を贈るだろう。
だが、調教された獅子は既に獅子ではない。図体のでかい犬でしかない。
優れた獅子を矮小な存在に貶めることが、芹澤の好むものではないのだ。
芹澤は、アキラの耳に下をさしこみ。ひとしきり舐めしゃぶった後で、そっと毒を注ぎこんだ。
「彼は、いまから君のもの……」
芹澤の言葉は最後まで聞き取れなかった。
明り取りの窓から閃光が落ちたかと思うと、秘め事の為だけに存在する密室は、突然の闇に沈んだ。
何が起きたのか、説明するかのように雷鳴が、防音を施された半地下のこの部屋にまで聞こえてきた。
それはかすかな音と、びりびりと震撼する空気だった。
静寂ゆえに認識できた音ではあったが、心理的には耳をつんざくほどの大音量だった。



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