遠雷 42


(42)
三人三様、闇の中目をしばたたかせる。
言葉はなかった。誰一人として、口を開こうとはしなかった。
耳が痛くなるほどの静けさの中、普段の生活では聞き逃して当たり前のチチッという電気の音が煩く感じられると、やがて白熱灯が再び三人の秘め事を見下ろしていた。
まだ電量が足りないのだろうか、それは幾分弱々しい光だった。
くっきりとした陰影が、すべての輪郭をかえって曖昧にぼかしている。
そのなかで、アキラは乾いてしまった上唇を舌先でゆっくり湿らすと、静かに命じた。
「きれいにして欲しい」
男も芹澤も、すぐには理解できなかった。
彼らの戸惑いを知ってか、アキラが足を動かす。
自らの意思で、左右に大きく割り広げられた下肢。
アキラの"犬"は、その中心に顔を埋めた。
芹澤は、その一部始終を、アキラの背後から眺めていた。
喉の奥で、くぐもった笑い声を上げながら。

―――――狂乱の夜の、それは最後の儀式だった。



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