遠雷 6


(6)
アキラの胸の上で、ちゅっという音が聞こえた。
壮年の男が、アキラの乳首に吸い付いたのだ。
「う、ゥ〜〜〜っ!」
ちゅぷちゅぷと濡れた音をわざと響かせて、男は赤ん坊のようにアキラの乳首を吸う。
「!」
芹沢の指先で、潰すような勢いで摘まれたそこは、ジンジンと痛み熱を孕んでいた。
その熱を煽るように、男の生暖かい舌が今度は下から上へと舐めあげる。
アキラの意思を無視する形で、その腰がぴくっぴくっと跳ねあがる。
「いいだろう?」
芹沢が楽しそうに囁く。
「塔矢アキラくん、君は幸せだよ。彼は、この私が仕込んだからね、
素晴らしい舌技の持ち主なんだよ。なにしろ犬だからね、私がいいと言うまで
それこそ何時間でも舐めつづけるんだ。そうだな?」
芹沢が、男の髪を掴み顔を起こし尋ねると、男は嬉しそうに吐息を漏らし、
「はい、左様でございます」と答えた。
アキラの全身に再び悪寒が走る。
自分の父親と同じ年代の男が、頬を染めうっとりと吐きだす言葉は信じられないものだった。
芹沢はふっと笑うと、男の髪から手を離した。
男はまたアキラの乳首に舌を這わせる。
アキラがそちらに意識を向けている隙を見て、芹沢の手が動く。
――――あっ!
アキラが気づいたときには、芹沢の指は空いているほうの乳首を捉えていた。

痛苦――――――――

右の乳首に与えられた痛みは、ひねり潰されるものだった。
いま左の乳首に与えられた痛みは、ちぎれるような痛み。
芹沢は爪を食い込ませ、摘み上げる。
――――あっあぁぁぁ!!



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