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チャイムの音に驚いた青年が、部屋の壁に取り付けられたインターホンのモニター画面に視線を向けた。
人影が見える。
時計に視線を向けた。
針は7時30分を指している。
この時間に、いったい誰が来たんだ・・・・・もしも両親だとしたら、この姿を見て、僕だと分かってもらえるのか?・・・・・説明しても理解してもらえずに、どこかの病院に連れて行かれてしまうのではないだろうか?・・・・・いったいどうすれば・・・・・?
いろいろな思いが頭の中で渦巻いている。
青年がインターホンにゆっくりと近づいて行く。
画面に映っているのは、制服姿の女の子だった。
彼女が着ている制服には見覚えがある・・・・・そう、昨夜、コンビニからの帰り道に『浮かんでいた』あの制服だ。
青年は、モニター画面をじっと見つめている。
画面に映っている女の子には、当然ながら見覚えはない・・・・・誰なんだ・・・・・?
青年は、震える指でインターホンのボタンを押した。

「・・・・・はい・・・・・?」

震える声で答えると。

「おはよう♪ 平瀬です。」

元気な声が帰ってきた。
画面の中では、制服少女の笑顔が弾けている。
平瀬・・・・・?
青年が懸命に記憶を辿っても、平瀬という名字の女の子は記憶にはない。
誰なんだ・・・・・?
頭の中で、疑問が渦巻く。
青年は、ゆっくり玄関に歩いて行く。
鍵を外すと玄関のドアを少しだけ開けて、外の様子を見た。
そこには、ショートカットの黒髪の、活発そうな女の子が立っていた。
彼女はパジャマ姿の青年を見ると、元気な声でこう言ったのだ。

「玲奈、おはよう♪」

青年は怯えるような視線を、扉の向こう側に立つショートカットの黒髪の活発そうな女の子に向けていた。
青年の頭の中は、困惑と戸惑いでいっぱいだった。
この女の子は何故、僕の部屋に来たのか・・・・・?
何故、初対面の僕に『玲奈』・・・・・部屋に置かれていた学生証に書かれていた名前・・・・・と呼びかけたのか?
青年の思いには彼女は気がつかなかったのだろう。
彼女は明るい声で言った。

「もう・・・・・玲奈は、まだ寝ぼけているの?」

扉の外に立つ『黒髪美少女』は、その外見の通り明るく笑った。

「君は・・・・・」

誰・・・・・? 青年は、彼女に問いかけようとしたのだが、彼女は青年を部屋の中に押し戻すように、

「早く準備しないと、学校に遅れるよ♪」

青年と一緒に部屋に入った。
青年は、制服少女に押されるように部屋に入ってきた。

「ちょっと・・・・・ちょっと?!」

青年が『制服少女』を止めようとしても、女の子の姿になった青年は、筋力も『女の子並み』に変わってしまっているようだ。
『制服少女』は玄関でローファーの革靴を脱ぐと、難なく青年の部屋に上がり込んだ。

「ちょっと待てよ?!」

部屋の中央まで押し込まれて、ようやく『制服少女』に向き直った青年が、

「君は誰だよ!」

『パジャマ姿の女の子』になっている青年が、強い口調で叫んだ。
その声は、すっかり女の子の声なのだが・・・・・。
結果的にそれが青年を益々、苛立たせることになるのだが。
青年を見ていた『制服少女』は、きょとんとした表情で青年を見ていたが、やがて小さなため息をついた。
両手を腰にあてると、

「玲奈、まだ眠っているの?」

ちょっとムッとした表情を青年・・・・・玲奈に・・・・・向けた。

「わたしは平瀬葉月(ひらせ はづき)、あなたの同級生でしょう?!」

しっかりしてよ・・・・・そう言うと葉月は、『この部屋』の事情を良く知っているのだろう。クローゼットを開けると、中から服を取り出した。

「さあ、玲奈・・・・・本当に早く準備しないと、遅刻するよ!」

そう言って葉月がクローゼットから取り出したのは、彼女が着ているものと同じ・・・・・そう、青年にとっては、『彼をこの姿に変えた』あの制服だった。

制服・・・・・?
青年は、まるで恐ろしい物を見るように、彼女が手にした制服を見つめていた。
青年の脳裏に、昨夜の光景が甦ってくる。
深夜、点滅する蛍光灯の光に浮かび上がる、まるで生きているかのような、女子学生の制服・・・・・それが『僕の制服』なのか?
そんな青年の思いには気がつかないのだろう。

「ほら、早く!」

ショートカットの髪の美少女・・・・・稲葉葉月は、青年の着ているパジャマを脱がせ始めた。
嫌だ!・・・・・青年は彼女の手を拒もうとした。
しかし、不思議なことに、身体は彼の意思を無視するかのように、指一本動かすことも出来ず、葉月は青年の着ているパジャマの上着を脱がせてしまった。

「はい、下も脱ぐ♪」

葉月が言うと、青年は拒む事が出来なかった。
ピンク色のパジャマを脱ぐと、ライトグリーンのショーツと、そこから伸びる白く健康的な太ももが空気に曝される。
女の子の下着を身につけた自分を、女の子が見ている・・・・・もちろん、今の青年は女の子の姿なのだが・・・・・そう思うと、青年の頬は、少しずつ赤くなっていった。

「女の子なのに、何を恥ずかしがっているの?」

葉月は青年をからかうように言いながら、青年に制服を手渡していく。
嫌だ! 着たくない!・・・・・青年の心は、そう思っているのだが、身体は彼の意思に叛いて、

「ありがとう」

可愛らしい声で葉月に礼を言うと、細い腕を伸ばして、白いブラウスに袖を通していく。
左右が逆なはずのボタンを『慣れた手つき』で留めると、スカートに足を通してウエストまで引き上げると、ファスナーを上げた。
TSF小説を読むのが好きだが、どうして女子学生の制服を、まるで『いつも着ているかのように』着る事が出来るのだろう? 青年の困惑にはお構い無く、濃紺のハイソックスを履き、リボンタイを着けると、顔を洗い、髪を整えた。
スクールバックを手にすると、

「もう、玲奈も女の子なんだから?」

葉月が部屋の真ん中にあるテーブルの前に青年(玲奈)を座らせると、テーブルの上に小さな鏡を置いて、青年(玲奈)の唇にリップを塗り、頬にファンデーションを塗っていく。

「玲奈は、すっぴんでも可愛いけど、やっぱりちょっとは、おしゃれをしないと・・・・・」

女の子なんだから・・・・・葉月が言った瞬間、鏡を見ていた青年の下腹部から背筋にかけて、不思議な感覚がかけ上がり、青年は思わず声をあげそうになるのを懸命にこらえた。
葉月は化粧品をバッグに片付けると、立ち上がりながら言った。

「さあ、行こう♪」

二人の女子高校生は、朝の光が降り注ぐ街を、学校に向かって歩いて行った。



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