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この物語は、『突然の贈り物』に”ちょっとだけ登場”したキャラクターたちの、「その夜の出来事」です・・・・。


トランスかくれんぼ

(第1話)

作:逃げ馬






8月の夜。
夜の街を歩く男の前に見えるのは、月明かりに照らされた学校の校舎。
男たちはレンガ造りの立派な校門の前まで来ると立ち止まり、閉じている校門の格子越しに中を見つめている。
夜の学校の校内は、当然ながら真っ暗だ。
ただ一か所、レンガ造りの礼拝堂からは、美しいステンドグラス越しに灯りが漏れている。

一人の男が居並ぶ男たちを見渡すと一言、
「行くぞ・・・・」
4人の男は、校門の鉄柵に近寄った。リーダーらしい、体のごつい男が鉄柵に上ろうとして手をかけた。
「・・・?」
男が鉄柵から降りてきた。
「どうした?」
手足の太いがっしりとした体つきの男が尋ねると、
男は黙って鉄柵に手をかけ、腕に力を入れた。
すると、鉄柵が静かに開いて行く。
男が振り返る。
4人の男性たちが、視線を交わす。
理知的な顔つきの青年が、俯きながら、
「やめませんか・・・・?」
少し躊躇いがちに言ったが、
「何言ってんだよ!」
男は鉄柵に手をかけたまま笑った。
「さあ、いくぞ!」
男が門の向こう・・・・純愛女子学園の校内に入っていく。
3人の男も、お互い顔を見合わせながら、その後ろに続いて入っていった。



「誰も・・・・いないな・・・・」
先頭を歩く岩原俊哉が呟いた。
彼は剛気体育大学の3回生。このグループのリーダー格の人物だ。
アメフトで鍛え上げられた肉体を、少し緊張させながら歩いている。
「確かに・・・・・門の警備員もいなかったな?」
横に広い体つき”の小川勝は3回生の柔道部員だ。
彼もあたりを見回しながら歩いている。
「パトロール中なのかもしれませんね」
180pの長身の根岸昌宏は2回生の陸上部員だ。
岩原や小川とは寮の飲み仲間”で、なぜかウマが合った。
そのせいか、この探検”に参加する羽目になったのだが・・・・。

理知的な顔つきの青年が、岩原に尋ねた。
「そういえば、昼間の話・・・・本当なのですか?」
この学校に入った男たちが女の子になってしまうなんて・・・・・ありえませんよ。
青年・・・井上秀明が困惑した表情をしている。
井上は小川と同じ2回生。170pとスポーツをする男から見るとどちらかというと小柄”だが、インカレでも好成績を出す俊足と、本来は『心理学を学ぶために体育大学に入学した』という『この大学としては変わり種』の学生だ。
岩原は井上を振り返るとニヤリと笑い歩いていく。
井上たち3人はお互い見つめあうと、首を傾げながら岩原の後を追った。



岩原が樫で作られた立派なドアを開けた。
3人も岩原の後から入っていく。
岩原や井上・・・・4人の男たちを迎えたのは、揺れるランプや蝋燭の温かい灯りと、その灯りに照らされた立派な聖母像だった。
4人の男を聖母像は、微笑を浮かべながら見つめている。
岩原が3人の男たちを見ながら、
「昼間に言ったよな・・・・“この学校に入り込んだ男は女にされてしまう”と・・・・」
3人の男たちが、それぞれ頷くのを見ながら岩原は、聖母像を指さしながら、
「こいつが入り込んだ男たちを女に変えている・・・・・そんな噂があるんだ」
「まさか・・・・」
3人が笑い出す。岩原も微笑みながら、
「まあ、よくある“都市伝説”ってやつだろうな・・・・」
どこか一か所に男たちを集めて、女の子にしてしまうゲームまでやっているなんて噂まであるくらいだから・・・・岩佐が笑うと、
「ありえね〜〜〜」
小川が肩をゆすりながら笑っている。
「さあ、せっかくだから見学に行こうぜ!」
根岸が言うと、4人は礼拝堂の扉を開けた。
礼拝堂を出ていく4人の男たちを、聖母像は静かに見下ろしていた。




男たちは、高校の校舎の中を歩いていた。
校舎の正面の入口を入るとホールに置かれたショーケースには、この学校の運動部や文化部が獲得した優勝旗や賞状、優勝盾が展示されていた。
「さすがは純愛女子・・・どの部も活躍していますね・・・・」
井上が感嘆のため息をついた。
その時、
「おお〜〜〜〜?! すげ〜〜〜〜?!」
ホールに大きな声が響き、井上は驚きのあまり飛びあがった。
「いったい何が?!」
声の聞こえた方向に視線を向けると、体のごつい3人の男が、ショーケースの一点を見つめている。
その視線の先にあったのは、純愛女子学園高校の制服を着たマネキン人形だった。
「先輩・・・・(^^;」
井上が苦笑いしていると、
「可愛いよなあ・・・・この学校の制服は・・・・・」
岩原がごつい顔に似合わないセリフを言うと、
「着る人間を選ぶ制服ですよね・・・・・」
スタイルが良くないと似合わないからね・・・・小川が言うと、
「でも、純愛の生徒はかわいい女の子ばかりですよ・・・・」
昼間のプールでもそうだったじゃないですか・・・・根岸が二人を見ながら言った。
3人を見ている井上は、その理知的な顔に少し呆れたような微笑みを浮かべながら、
「先輩・・・・そろそろ帰りましょうよ・・・・」
3人に声をかけるのだが、
「この学校の生徒、本当にかわいいからなあ・・・・」
「でも、僕らが声をかけると逃げて行くじゃないですか・・・・」
「そうだよなあ・・・・」
3人がため息をつく、
「先輩・・・・」
井上が困惑した表情で3人を見つめている。
深夜の学校。
しかも、彼らは“無断で立ち入り”をしているのだ。
こんなところに警備員が来たりしたら、しかもここは女子校だ・・・・いったいどんな騒ぎになるのか・・・・そう思うと背中に冷たいものが流れてくる。



そんな井上にお構いなく、3人は制服を見つめてため息をついていた。
清潔な白いブラウスとエンジ色のリボンタイ。
ブルーのチェック柄のプリーツスカート。
そして濃紺のハイソックス。

「はあ〜〜〜〜・・・・」
3人がため息をついたその時、
「じゃあ、あなたたちもそれを着てみる?」
突然聞こえた声に4人の男は驚き、飛び上がった。
声の聞こえた方向を4人が見る。
そこに立っていたのは、今3人が見ていた制服・・・・純愛女子学園高校の制服を着た、ロングヘアの美少女だった。
「何を驚いているの・・・・?」
魅力的な微笑みを浮かべながら、少女が4人に近づいてくる。
「おまえは・・・・?」
岩原がドスを利かせた声で少女に向かっていった。
「わたし・・・・?」
少女はクスクスと笑いながら、
「そうね・・・・あなたたちと一緒に遊びに来たこの学校の生徒・・・・といったところかな?」
少女は4人の男ひとりひとりに視線を向けると、
「ねえ、わたしとゲームをしない?」
「ゲーム?」
4人の男たちが、お互い見詰め合いながら首を傾げる。
「そう、わたしとかくれんぼをするの・・・・わたしが鬼”で、あなたたちが1時間逃げるの・・・・」
逃げる場所は、この校舎の中・・・簡単でしょう? 彼女は微笑みながら言った。
井上は、薄気味悪さを感じていた。 岩原が言っていたことが頭の中によみがえってくる。 彼女はもしかすると・・・・?
井上が岩原のTシャツを引っ張りながら、
「岩原さん、さっさと・・・・・」
帰りましょう・・・・そう言い終わる前に、
「よし、やろうぜ!」
『エッ?』
井上が固まる。
「ああ・・・・いいな!」
小川が体を揺すりながら笑った。
「うん・・・いいですね!」
女の子と遊べる機会なんて、うちの大学ではありませんから・・・・・根岸もうれしそうだ。
「岩原さん?!」
井上が悲鳴のような声で叫んだが、
「さあ、始めようぜ!」
岩原が言うと、少女が微笑んだ。
魅力的な微笑み・・・・・一瞬井上はそう思ったが、その瞬間、背中に冷たいものが走った・・・・そう、恐怖心だ。
「じゃあ、あなたたちを捕まえるわよ!」
少女はそう言うと同時に、彼らに向かって走り出した。 
岩原、小川、根岸が笑いながら走り出す。
「鬼さん、こっちだよ!」
井上は、陸上部で鍛えた足を生かして3人より先に走っていく。
振り返ると、岩原が立ち止まっている。
「先輩?!」
井上が叫んだ瞬間、少女が微笑み、一段とスピードを上げた。
岩原は少女に抱き着くように腕を広げた。
「先輩、しょうがないなあ・・・・・」
根岸が笑った。
「こんなときじゃないと、女の子になんて抱きつけないからなあ・・・・」
小川もつられて笑っている。
3人の視線が岩原と、彼に駆け寄る少女に注がれる。
岩原が大きな体で少女に抱きついた・・・・3人がそう思った瞬間、赤い光が二人を包み込んだ。
3人が思わず「アッ?!」と叫んだ。
赤い光が消えたその時、そこにはあの少女が立っていた。
そして彼女の足元には、体操服とブルマに身を包んだショートカットの髪の少女が、頬を赤く染めながら横たわっていた。
彼女は、悩ましげな吐息を唇からもらすと、立ち上がった。
「まさか・・・・あれが岩原さん?」
井上が呟いた。
「そう、彼女は生まれ変わった彼よ・・・・」
少女が言った。
「さあ、あの3人も捕まえて、女の子の素晴らしさを教えてあげましょう!」
制服姿の長い髪の少女と、体操服とブルマ姿の少女・・・・・女の子になった岩原が井上達三人に迫る。
「やめろ!」
「先輩、俺達ですよ!!」
恐怖に駆られた男たちが叫びながら、誰もいない校舎の廊下を足音高く走る。

そう、恐怖のゲーム”が始まったのだ・・・・。



トランスかくれんぼ
(第1話)

おわり



作者の逃げ馬です。
8月中に出したかった「ホラー作品」ですが、少々遅れて9月1週目の登場となりました。
”謎の少女”(以前からの読者さんにはお約束?)との、恐怖のかくれんぼ・・・・残り3人の戦いはどうなるのか?
よろしければ、お付き合いください(^^)





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