† 白き邪眼のエルフ †
なんという目だろう。
剣士は思っていた。
こんなに美しい目は見たことがない。
蒼にも銀にも輝く瞳。
まるで宝石をはめ込んだようだ。
その目が怒りに燃えて、容赦ない殺気を剣士にぶつけてくる。
自身は身動きひとつ、取れぬというのに。
ぞくぞくした。
この強い目をしたハーフエルフを、引きずり倒し、思うさま陵辱したくて、剣士の心は欲望に震えた。
美しく汚れのないものを、引き裂きずたずたにしたいという、どす黒い欲望。
しかし、この死に体ではどうにも面白みに欠ける。
それに…。
見てみたかった。
護符に隠された、邪眼とやらを。
ならば、左目は、金に輝くのか。
それはこの月光の髪よりも尚、至高の宝珠なのか。
無言で近づいてくる剣士に、ハーフエルフは、一瞬、身じろぎをした。
逃げようとでもしているのか。
その裸身を押さえつけ、両手、両足をそれぞれ縛めた魔封じを外す。
白い肌に、生々しく火傷のような爛れた痕が、真っ赤についているのを見て、剣士は眉を顰めた。
死にかけているはずだ。
本来ドラゴンクラスに使うような、強い魔封じが使われていた。
さぞ魔導師に金を積んだのだろう。
このままこれ以上この枷をつけたままでいたら、両手も両足も腐って落ちるところだった。
恐怖は人を過剰に攻撃的にする。
ハーフエルフ風情に、強すぎるほど強い魔封じ。
それはすなわち、あの管理人が、どれだけこのハーフエルフに脅威を抱いていたか、という事だ。
魔封じを外した剣士を、ハーフエルフが戸惑いの表情を浮かべて見ている。
何故、と問いたいような顔だ。
剣士は黙って、ハーフエルフの左目の護符に手をかけた。
護符ごと、目を覆った布を剥ぎとった。
純金の瞳。
まさしく、その瞳は純金と呼ぶのにふさわしい輝きを放っていた。
髪の色よりも幾分濃く、輝きもずっと強い。
髪の色が冴えた月の光なら、この瞳は、強く燃え盛る火花だ。
鮮やかな光沢のある、黄金。
青銀の右目と、黄金の左目。
その、禍々しいほどの、美しさ。
この美しさは、禁忌だ。
欲望が、剣士の背をぞくぞくと這い上がる。
その衝動のまま、剣士はその白い体を押し倒した。
口付けようとすると、ハーフエルフの金の左目が、不気味に輝きだした。
きゅうっと瞳孔が小さくなる。
邪眼の発動。
ハッと剣士が身構える。
禍々しいほど強烈な“視線”が、剣士の心に容赦なく侵入してくる。
心の中の奥底まで、舐め回すような無遠慮な、あからさまな、“視線”。
人には誰にでも、多かれ少なかれ、隠しておきたいと思う過去や思い出がある。
犯した罪や、辛い経験、傷ついた出来事。
忘れていた過去。忘れたい過去。
邪眼はそれを、全て白日の元に引きずりだし、曝け出す。
なるほど、こんな“視線”は、並の人間ならひとたまりもないだろう。
その場で発狂してもおかしくない。
けれど、剣士は、口元ににやりと笑みを浮かべた。
心の中に、刃をイメージする。
一閃。
「───────ッッッ!?」
瞬間、目の前のハーフエルフが裂かれるような短い悲鳴を上げた。
剣士の心の中に侵入していた“視線”が消える。
その邪眼から、その禍々しい輝きが急速に光量を落とす。
ハーフエルフが愕然とした表情を浮かべる。
「…くっ!」
すぐに、ひゅんっと空を切る音がして、凄まじい風圧が剣士のこめかみを襲った。
とっさに拳骨でガードする。
がつっといやな音がして、腕に激痛が走った。
─────蹴り…?
それは、華奢な手負いの体から繰り出されたとはとても思えないような、重い、鋭い蹴りだった。
─────体術を使う…エルフ…だと…?
剣士は、自分の腕の骨に、恐らくひびが入ったらしいことを悟る。
大岩を蹴り砕いた、と言った、小屋の管理人の言葉を思い出した。
ではこの蹴りは、まだまだ甘い方なのだ。
恐らくは、衰弱していて本来の力の半分もろくに出せていないのだろう。
なのに、この威力。この速さ。
ふわり、とハーフエルフの白い裸身が宙に舞った。
鳥が翻るような、軽い跳躍。
くるりと一回転したその描いた弧の美しさに、剣士が一瞬目を奪われた。
次の瞬間、ハーフエルフの踵が狙い違わず剣士の脳天に襲い掛かってきた。
剣士は慌てて飛びのいてそれを避ける。
この容姿に油断していると、命がない。
剣士は本能でそれを悟った。
すぐさま間合いをとり、構える。
ハーフエルフが降り立つ、その一瞬を捕え、剣士の剣が閃いた。
居合の衝撃波。
ハーフエルフの体は、モロに喰らって小屋の壁に叩きつけられる。
どさりとその体がベッドに落ちる。
さっきのが瀕死の中での渾身の攻撃だったのだろう。
一撃で、ハーフエルフはあっけなく倒れ伏した。
激痛に、身をのたうたせるハーフエルフ。
剣士がベッドに駆け上がり、その体を荒々しく組み伏せる。
「う、あ…ッ…!」
ハーフエルフが苦悶の表情を浮かべた。
斬りこそしなかったが、本気の衝撃波をモロにくらったのだ。
肋骨くらいは折れているに違いない。
斬り殺しはしない。
てめェは、──────犯り殺してやる。
口元に薄笑いを浮かべながら、剣士は傷ついたハーフエルフの体を、容赦なく押さえつけた。
かはっ、とハーフエルフの口から鮮血が零れる。
「てめェ… 離しやがれ、クソ野郎…っ!」
初めてまともに聞いたハーフエルフの声は、とてもその美しい顔から発せられたとは思えないほど乱暴な言葉だったが、その声は、濁りがなく心地良かった。
「うるせぇ。おとなしく犯されろ。」
腹の奥までぶち込んでやる。と、凄絶に笑いながらそう返した剣士に、ハーフエルフの目に初めて怯えの色が浮かんだ。
ろくに動きも出来ない手足を緩慢にばたつかせて、逃れようと、もがく。
それを剣士は片手で易々と押さえ込み、白い尻たぶを鷲掴みにする。
「やめろ…っ!」
小さな窄まりに、いきなり指を突っ込む。
「ぅあッ…!」
その、固く狭い感触に、剣士は驚いた。
てっきりさんざんに客を取らされてきたと思ったのに、そこは固く閉ざされている。
荒れてもいない。
初物、という事か。
ちっ、と剣士は苛立たしげに舌打ちした。
姦りまくられていれば、まだしも事を進めるのが楽なものを。
これだけ凶暴な魔物だ。
捕まえたはいいが、突っ込むのは怖気づいたというところか。
それとも弱るまで待っているつもりだったか。
どちらにせよ、猫に鈴をつける役目を押し付けられたらしい。
魔物相手に、そこを丁寧にほぐしてやる気など、剣士にはなかった。
このハーフエルフだって、おとなしくなすがままにはなるまい。
今だって全身から猛烈な殺気を発しているのだ。
自分でハーフエルフの縛めを解いておきながら、剣士は思うようにことが進まない事に苛立った。
早く己の猛ったものをこの華奢な体に突っ込みたくてしかたない。
心の底からぞくぞくと湧きあがる欲望は抑えようがない。
見回すと、ベッドサイドに潤滑用の香油の瓶が置いてあった。
エルフの体を手荒くうつ伏せにして、腰を持ち上げる。
がっ…! とエルフの喉が鳴り、泡の混じった血が口から零れた。
剣士はベッドサイドから香油の瓶をとり、蓋を開けて、中の香油を直接ハーフエルフの肛門にぶちまけた。
香草の匂いが鼻につく。
ひッ、とハーフエルフが息を呑んだ。
必死に体を起こそうとするのを、頭を鷲掴みにしてベッドに押さえ込み、尚も腰だけを高く持ち上げさせた。
剣士はそのまま瓶の口をエルフの肛門に突き込んで、中に香油を注ぎこむ。
「やめ…、てめェ、やめろ…! うぅ…っ!」
ハーフエルフがもがく。
結構な量の香油を、全てハーフエルフの腸に注ぎ入れた。
指を突っ込むと、孔はまだ固く狭いものの、大量に入れられた香油のせいで、そこはぬるぬると滑りがいい。
ぐちゅぐちゅと淫猥な音がする。
ほくそ笑み、剣士は己の前を寛げた。
巨大な怒張が現れる。
ハーフエルフのそこを指でおざなりに広げ、剣士は、性急に熱く脈打つそれを一気に突きこんだ。
「うあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ッッッッ!!!」
ハーフエルフの体が、裂かれる激痛に跳ねた。
白い体がショックでがくがくと痙攣する。
「ぐぅッ…!」
香油のせいで挿入は比較的容易だったが、ハーフエルフの華奢な体には、剣士のそれはどうにも巨大すぎた。
「うあ、ア… あ あッ… て、め… 殺し…てやる…ッ!」
白い肌を、鮮血が伝う。
不意に、香油とは違う、花のような香りが、ふわりと剣士の鼻腔をくすぐった。
それがエルフの血の匂いであることに気づく。
儚げで白く美しく、血の匂いまでもが芳しい、種族。
自分が犯してはならぬ聖域を土足で踏み荒らそうとしている事に、剣士の嗜虐心は煽られた。
口元に喜悦の笑みを浮かべながら、剣士は抽迭を開始した。
エルフの腰を持ち上げ、剛直を思い切り根元まで埋め込む。
「ひィッ! や… やめ… あぅ…! ちくしょうッ…!」
ずるずると引き抜くと、カリに掻き出されて、血と香油の混ざったものが、じゅるり、とあふれてきた。
もう一度、エルフの体の奥の奥まで、犯す。
「うあぁーーーっ…! あああ… ひあ…ッ!」
食いちぎられそうだ、と剣士は思った。
無意識に、侵入する異物を排除しようとしてか、ハーフエルフの中はひっきりなしにひくひくと蠕動している。
逃れようとのたうつ様も、妙にいやらしく腰をくねらせているようにも、見える。
剣士の動きに合わせて、白くしなやかな体が、のたうつ。
その、壮絶な艶かしさ。
清浄な天上の華を無残に手折っているという、征服感。
この体を今まで抱かなかった奴らは、バカだ。
「くそ…っ! うあ… あ ぅ…んっ…! んんっ…!」
あまり上等とはいえない薄汚れたシーツの上に、ぽたぽたと血が滴り落ちる。
エルフの体は、時おり緩慢に腕を彷徨わせるだけで、剣士に貫かれるまま揺すぶられている。
うわごとのように、「…殺してやる… 殺…して…や…」と呟いているが、もう半ば意識を飛ばしているようだ。
それでもエルフのそこは、痙攣しながらきついほどに締め付けてきて、眩暈がするほど快楽を与えてくれる。
たまんねぇな。
剣士はハーフエルフを陵辱しながら、ぺろりと唇を舐めた。
たまらなく、イイ。
こんなに具合のいい孔は初めてだった。
なめらかな手触りの肌も、潤みながら睨み返してくる目も、ばさばさと乱れながらも光沢を放つ髪も、罵りながら喘ぐ声も、全てが剣士の欲を煽る。
姦り殺すつもりで犯しているのに、このまま殺してしまうのは惜しいような気がした。
情でも移ったか?
─────まさかな。
たかが魔物一匹。
たかが一夜の慰み。
情など移るはずがない。
ただ、この強さ、この美しさを、何となく失うのが惜しいような気がするだけだ。
それに、男を初めて受け入れたそこは、まだまだ青く、固い。
じっくりと時間をかけて仕込めば、どれだけの快楽を与えてくれる体になるだろう。
それができないのが、なんとなくもったいないような気がするだけだ。
情などでは、ない。
欲、だ。
剣士は、ハーフエルフの腸を突き破るかと思うほどの勢いで巨大なペニスをつき込むと、その欲望の全てをエルフの一番奥にぶちまけた。
2004/05/14