1998年も夏になりました。夏の最初の3連休は周遊きっぷの旅行をすることは決まっています。
しかしもちろん青春18きっぷの旅行もしてみたいです。
ここでぜひとも乗ってみたい列車がありました。それは、
・小出駅を朝6時前に発車する、只見線のディーゼル車
です。
ここには4年前に乗っているのですが、あの時の只見線はとても混雑していて、あまり雰囲気が良くなかったので、できればあまりお客のいない朝6時前の列車に乗ろうと考えたわけです。
できれば宿泊せずに、夜行列車で小出に行ければ良いですが、残念ながら小出に朝着く列車はなく、かわりに西武の新潟行きの夜行高速バスが小出停留所を通ることがわかりました。しかし、停留所というからには駅から遠そうです。
幸いなことに、高速バスは昼間も通っているので、本屋で小出周辺の2万5千分の1の地図を買い、4月に昼間のバスで小出停留所に降りて、小出駅まで歩いてみました。その結果、約50分かかり、夜行のバスは小出に午前3時に停車するので歩いて只見線に間に合うことがわかりました。
そのため8月にこの夜行バス→始発只見線のルートを試す計画を実行することにしました。
列車には青春18きっぷで乗ることにして、まずは夜行バスを予約することにしました。
新潟行きの夜行バスは池袋から出ています。幸い以前に上信電鉄に乗るため池袋〜下仁田(しもにた)間で西武のバスを利用したことがあり、同じ系統なのでその時と同じ販売所に行けばバスの乗車券が買えるだろうと考えました。
時刻表にあった西武バスの電話番号に電話して予約番号を取り、直接池袋駅に行って高速バスの乗車券を買いました。
残りの青春18きっぷをどう使うかはまたあとで考えることにします。
山手線には平日の朝に席をたたんで客全員が立たなければならない車両がある(1998年現在)。その車両にはディスプレイがあって、いろいろな情報がディスプレイに映る。
その日の山手線のディスプレイには、パリーグのピッチャーの防御率と勝ち星が表示されていた。
その中の、ロッテの小宮山(こみやま)というピッチャーの防御率を見ると、けっこう優秀だ。しかし勝ち星が悪く、勝ちと同じ数だけ負けている。他のピッチャーは小宮山より防御率が悪いのに負けは少ない。
ぼくはどうしてだろうかと思ったが、おそらくロッテの打線が点を取れず、小宮山が相手チームの点を少ない点で抑えても、より少ない点しか取れないから小宮山に負けがついてしまうんだろうなあと思った。
そんなことを考えているうちに山手線は池袋に到着した。ここで降りる。今は午後10時過ぎである。
東口を出て、新潟行きのバスが出るバス乗り場に行く。この西武バスの乗り場はあちこちに向かうバスが発車していくのだ。今も夜行バスに乗るお客が次々と乗っていく。
さて、まだ新潟行きまでは時間があるようだ。なんとなく牛丼でも食べようかと思った。このあたりでよく行く吉野家は都電の東池袋五丁目のそばだが、ちょっとそこまで行く気にはなれない。もっと池袋駅近くに吉野家はないだろうか。
ためしに南の方に歩いていったら見つかった。吉野家に入って並をたのむ。
今日はもう夕食は食べているが、あしたの朝食はカロリーメイトだからここで牛丼を食べてもいいだろう。うーんうまい。今日もうまい牛丼が食えた。
たまにたまねぎが半ナマなことがあるので、たまねぎがちゃんと煮込んであるとホッとするのである。おなかがちょっとふくれたところでバス停に戻る。
また何本かバスの出発を見送り、いよいよ新潟行きがやってきた。4月に乗った昼間のバスと同じく4列シートである。
降りるのが小出なので、荷物を預けずにバスに乗った。通路側の席で、となりは女性である。なにしろ女性の方が多く、男女比は3:7なのだ。全員乗ると発車である。
しばらく一般道を通り、関越自動車道に入る。お盆にはまだ早いのですいすい進む。
昼間のバスだと上里サービスエリアで休憩していたが、なんとこの夜行バスでも休憩するそうだ。上里に着いた。こんな夜12時過ぎでもサービスエリアはにぎわっている。もちろんトイレには行っておく。
そしてさらに北に進む。群馬県に入り、渋川を過ぎて山の中に入っていく。
沼田を過ぎたあたりで、突然霧が出てきた。
やっぱり夏なので、群馬と新潟の県境では霧が出ることもあるみたいだ。ひどいときは高速道路が通行止めになることもあるようだが、なんとか徐行程度ですんだようで、長いトンネルに入る。
トンネルを抜けるともう霧はなかった。よかった。これで定刻に小出に着きそうだ。
あとは4月に乗った時と同様に、まず湯沢のインターチェンジで料金所の脇の停留所にバスは停まる。
こんな場所でも2人ほど降りる人がいる。そして次々と停留所に停車していく。いよいよ小出だ。
小出の停留所に無事午前3時ごろ到着。ぼくの他に2人ほど女性が降りていく。これでなんとか朝の只見線に乗れるようだ。ぼくはJRの小出駅に向けて歩き始めた。
新潟行き夜行の西武バスを小出インターチェンジのそばの停留所で降りた。
今日乗る只見線は、朝6時前に発車する列車である。上越線には「ムーンライトえちご」という夜行列車があるが、残念ながらこの列車は高崎を出ると次の停車駅は長岡で、小出駅は通過である。
しかしムーンライトえちごとライバル関係にある西武の夜行バスには小出停留所があり、バスがちゃんと停車する。だからこのバスに乗って只見線に乗る計画を立てたのである。
ただしここの停留所は駅から離れている。小出駅までの道順が問題である。
そのため、ぼくは4ヶ月前に昼間のバスでこの停留所に降り、小出駅まで歩く予行演習を行っている。だから道順はわかっている。この停留所からまっすぐ西に歩き、上越線が見えたら右に曲がればいいのである。
4ヶ月前に歩いたのと同じ道を、てくてく西に歩いた。
上越線が見えてきた。ちょうど貨物列車が通るところであった。
学校があるところで右に曲がると旅客の列車もやってきた。ムーンライトえちごのようである。
とぼとぼと北に進み、なんとか小出駅にやってきた。小出停留所を出発したのが午前3時で、今が午前4時なので、ぴったり1時間かかったことになる。まずは徒歩連絡は道に迷うこともなく成功した。めでたい。
さて、会津若松行きの只見線の時刻までまだ1時間以上時間がある。
かなり歩いたのでもう歩きたくない。しかし駅のシャッターは閉まっている。
そのため駅前のロータリーの中央の植え込みのコンクリートにすわることにした。
駅前に自動販売機がある。
ビールの自動販売機だ。しかしまだ5時前なので販売停止中であった。
普通のジュースの自動販売機もあるが、なんとなくビールが飲みたくなった。ジュースが最近120円に値上げしたということもある。どんなものもそうだが、110円に値上げしてから120円に値上げするまではあっという間である。
5時ちょうどに買うことにして、ロータリーの植え込みに戻って5時を待った。
5時になった。ピピピッとランプが切り替わった時にすかさずスーパードライを買った。
もう駅の出入り口は開いている。中にはいると駅員はいないがバスの整理券みたいな券を出す機械がある。小出駅から入場したことを証明する機械らしい。おそらくこれを引いて車内で青春18きっぷに日付を入れてもらえばいいと思い、1枚引いて改札を通り、階段をわたってディーゼル車に向かった。
ディーゼル車は4年前に乗ったのと変わらない車両だった。
もちろんほとんどお客はいない。
しかし何人か乗ってくる。もちろん小出駅近くの宿で泊まったお客だろう。
車掌がやってきたのでさきほど取った整理券と青春18きっぷを渡すと、「会津若松車掌区」と書かれたスタンプが1日目の所に押され、整理券は回収された。
だいぶ明るくなってきた。もうそろそろ発車のようだ。
発車時刻が来てディーゼル車は小出駅を発車した。上越線から離れていく。
用意しておいたカロリーメイトを食べ、スーパードライを飲んで景色をながめてすごす。ごとごととディーゼル車は進んでいく。
しかし眠いところにスーパードライ、そしてカロリーメイトである。たちまちぼくは眠ってしまった。
雄大な川もなにもかも夢の中で過ごすことになってしまった。
目が覚めると終点に到着する直前であった。
そして列車は、会津若松駅に到着した。
列車を降りる時にまわりを見ると、老人のお客が多いことに気が付いた。
なるほど、只見線の中央部分に住む人が会津若松に用事があって、そういうお客が多いのだろうと思った。
まだ朝11時前である。たくさんいる老人客に混じってぼくは、会津若松の街でどうするか考えることにした。
まずは買い物である。駅前にサティがあったので買い物である。ちょうどセールをやっていて安くなっていた。お菓子や飲み物を買った。
そして駅前でラーメン屋をさがして喜多方ラーメンを食べた。
それからぼくは、中学の時の修学旅行で行った鶴が城に行くことにした。あの時は地元からバスで来たので、会津若松駅からバスで行きたかったのである。
駅前に並ぶバスの中から、鶴が城に行きそうなバスを選んで乗った。
バスは市内をすいすい進み、市街地をはずれて山のそばに来た。そこは白虎隊が自刃した場所であった。いろいろ観光地をまわっていくのだろう。
さらに進み、鶴が城が見える停留所に来た。ここで降りる。
バス停から進むと鶴が城が見えた。とりあえず満足した。
ぼくはお城を見上げただけで去ることにした。ぼくの旅行はこんなふうに終わることが多いのである。
さてここからだと会津若松よりも西若松駅の方が近そうなので歩いて進むことにする。
てくてく歩いた。南に進み、右に曲がって西に向かった。
工事中の場所を進むとようやく只見線の西若松駅に着いた。
ここは乗り場が2つある。只見線用のホームと会津鉄道用のホームだ。
小出方面もしくは会津高原方面に進む時はどちらかのホームに行けば良いが、会津若松方面に乗る時は、次に来るディーゼル車が只見線なのか会津鉄道なのか調べて、それぞれのホームに進む必要がある。
こういう駅は田舎のみではなく、けっこう都会にもあったりする。品川駅なんかもそうである。次に来る田町方面が山手線なのか京浜東北線なのかでホームが違うのだ。
今度来るディーゼル車は会津田島から来るようだ。会津鉄道の入口は階段を昇った所にある入口である。入口を進んで階段をおりてホームでディーゼル車を待った。やってきたのは只見線のふるめかしいディーゼル車とは違い、新しめの整理券方式のディーゼル車であった。
乗ってしまえばあっという間で、市街地を進んでディーゼル車は会津若松に着いた。
もう日も暮れ始めている。ぼくは早く帰ろうと郡山行きの電車に乗り換えることにした。
西若松から乗ってきた会津鉄道のディーゼル車を会津若松で降り、郡山行きの電車に乗り換える。
東北本線は奥羽本線に続いてロングシートの電車が増えたようだが、磐越西線は相変わらずボックスシートを主体とした電車を走らせているようだ。もっともぼくはボックスシートはあまり好きではなく、ロングシートの方が好きなのだが。
電車は発車する。4年前に只見線に乗った時より早く会津若松を出発だ。
電車は磐梯山を見ながら進む。景色のいい所を通る路線であり、只見線とはまた別の魅力がある。もっとも今日は只見線ではほとんど寝ていたので、磐越西線で景色をしっかり見ておこう。
はじめて磐越西線に乗った学生時代は、なにかのトラブルで電車が30分以上も遅れたものだが、今日はそんなことは起こらず、電車は無事郡山駅に到着した。さあ、黒磯行きに乗り換えよう。
会津若松から乗ってきた電車を郡山で降り、階段をのぼっておりて東北本線の黒磯行きのホームにやってきた。そこにやってきた電車は、オールロングシートで、細い緑と赤のラインのある電車だった。
内装は仙台より北の東北本線や山形より北の奥羽本線と同じようなものだったが、あの電車は紫色の太いラインのある電車だった。でもまあ似たような電車なのだろう。
昔はこのあたりには冷房のない客車が走っていたのだから、ずいぶんと進歩したものだと思った。けっこう客がいるため立ったまま発車だ。だんだん日が暮れていく。白河でお客がだいぶ降りてすわれた。
このあたりは福島と栃木の県境の景色がけっこう好きである。森の中を走り、栃木側では高架になってながめも良いのである。黒磯では電車の前の方に行った方が乗り換えやすいので進んでおく。そして黒磯着。上野行きに乗り換えだ。
上野行きは長い編成なのでゆったりとすわれる。電車は発車し、平野を走る。宇都宮まででかなり混雑してきた。
途中小山(おやま)で降りる。ここで食事していくことにする。駅前の中華料理店に行き、ラーメンとギョーザを食べることにした。うーんうまいなあ。
雑居ビルの上の方の階のせまい店だったが、ラーメンもギョーザもうまかった。
名物と言うとそばとか牛肉とかいろいろあるが、やっぱりラーメンがうまいのが一番だなあと思う。こういう食事ができるのが旅行のダイゴミなのだろう。ぼくは小山駅に戻り、帰ることにした。