恋するアゲハマ嬢 1


(1)
「…ええ、わかったわ、アキラ君。彼が来たら奥の部屋に案内すればいいのね。
 大丈夫、それじゃ気をつけてきてね」
明るく弾んだ声とは裏腹に、市河晴美は沈んだ表情を浮かべ受話器を置いた。
大好きなアキラと久しぶりに話せたことは嬉しいが、その内容がどうにもこうにもいただけない。
それは、今日友達と碁を打つ約束をしているが自分は学校の用事で少し遅くなるので、
もし彼が来たら自分が来るまで待っていてもらって欲しい、という他愛のないものなのだが、
問題なのはその相手、アキラの“友達”進藤ヒカルである。
おそらくきっと絶対、アキラの最初で最後の友人となるであろうこの少年は、
アキラと同じ囲碁のプロ棋士で、その棋力は天才と称されるアキラに勝るとも劣らないものらしい。
実は市河は周囲が騒ぐほどヒカルの実力を正しく把握できていない。
ただ、アキラの凄さは熟知しているので、アキラと対等ならば同じように凄いのだろうと思う程度だ。
小さい頃から大人に囲まれ碁を打っていたアキラは、
歳の割には妙に落ち着いたところの多分にある少年だった。
おまけに父親似の端整な顔立ちと母親譲りの上品な物腰がいかにも良家のご子息といった風情で、
初めて会った時などあまりの可愛らしさに、市河は感動の涙を流したものだ。
当時アキラは小学校低学年、市河は花も恥らう女子高生だった。
言葉は悪いが、市河はその頃からアキラに目を付けていたのである。



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