恋するアゲハマ嬢 11


(11)
「せっかく美人を同伴してるんだ、焼肉屋はあんまりだろう。──ついて来い」
緒方は一人背を向け、歓楽街へ向かって歩き始めた。
その堂々とした後姿はまさしく“夜の帝王”と呼ぶに相応しい威厳と貫禄に
満ちている。トレードマークの白いスーツは、日中よりもやはり闇夜に良く映え、
市河はその筋の者に絡まれやしないかと内心ヒヤヒヤしていた。
そういえば緒方は、囲碁界の若き王者という意味でジャングル大帝の“レオ”、
一部キャバ嬢には狙った獲物は逃さない腕前から“ホワイトシャーク”と
呼ばれていると聞いたことがある。
──獅子になったり鮫になったり、緒方先生も忙しいわね。
市河の目に、すれ違う、自分とさほど年齢の変わらない女の子たちが
夜専用のファッションでたむろしているのが映る。
市河は激しく後悔した。
自分はといえばマニキュアも落ちたまま、髪も洋服も碁会所仕様で、
若い娘だというのに勝負どころが全くない。
──出かけるのがわかっていればもう少し可愛い服を着てきたのに…。
落ち込む市河の前を、愛しのアキラはヒカルと並んで歩いている。
目のやり場に困っているのか、少し俯き加減に歩くアキラとは対照的に、
ヒカルは興味津津でいろんなものに立ち止まってはへぇー、ほー、と
感嘆の声を上げていく。
「ここだ」
路地を抜けて辿り付いた店の名は『神経酔弱』。
緒方の隠れ家の一つだと言う。



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