恋するアゲハマ嬢 15
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程なくして飲み物が届けられ、一口飲むか飲まないかの間隔を置いて
マッシュルームとオニオンのクリームスープが運ばれてきた。
食欲をそそる匂いに空腹の身が敵うはずもなく、三人はほぼ同時に
スプーンに手を伸ばし、いただきますの声を上げて降参した。
「…美味しいですね」
「ホントに!いい味だわ」
「マジ美味いー!!くーッ胃に沁みるーッ!!」
「ハハハ、そうしてるとまるで姉弟みたいだな」
一人カウンターに座って笑いながらグラスを傾けている緒方の手前には、
小さなフライパンと薄切りのガーリックトーストが並べられている。
「緒方先生は何を召し上がってらっしゃるの?」
市河はフライパンの中身に興味を示した。
「3種類のチーズを熱して、溶かしてあるんですよ」
緒方の代わりに答えたのは、どでかい鍋を抱えた店主だった。
「店のメニューには載せてません。緒方君だけの特別メニューなんでね。
名付けるなら“緒方スペシャル・チーズフォンデュ風”ってとこかな」
香ばしく焼きあがったガーリックトーストを、フライパンの中で溶けきった
チーズに付けて食べるのが「緒方流」とのこと。
「それにしても前もって連絡くれればサフランを仕込めたんだけどね」
残念そうな口ぶりで店主は緒方に詰るような視線を送りつつ、
腹を空かせた雛鳥達の前にその大鍋を軽やかに置いた。
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