恋するアゲハマ嬢 16


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「うわ、すっげぇいい匂い!」
「たくさんあるから、どんどん食べてくれよ。緒方君も少しどうだい?」
大鍋の正体は地中海風パエリアだった。しかし店主の弁によると、
サフランライスではないのでシーフードピラフということになるらしい。
「オレは遠慮しておこう。奥に座ってる小僧の取り分が減って、
 あとで恨まれたりしたら面倒だからな」
「─緒方先生、もしかしてコゾウってオレのこと?」
「間違いなくキミのことだよ」
スープを飲み終えたアキラが惑うことなくヒカルに真実を告げる。
「失礼だな!いくら腹が減ってても象みたいにばくばく食わねーってば!」
「…その象じゃないと思うよ、進藤」
憐れむような表情を浮かべ、ヒカルを直視するアキラ。
そんな顔ですら美しすぎて、市河は手を止めてついつい見惚れてしまう。
「…ボクの顔に何か付いてますか?」
店主が取り分けたシーフードピラフに舌鼓を打っているはずのアキラが、
ふと顔を上げ市河に尋ねた。
市河と言えば、スープを上品に飲み終え、海老の殻を器用に剥き、
ムール貝の貝柱を鮮やかに取り外し、魚の白身を優雅に口に運ぶアキラの洗練された
仕草に気を取られ、食が全く進んでいない状態だった。



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