恋するアゲハマ嬢 24


(24)
──緒方先生がどろどろ?何が?陰険な性格が?株?人間関係?それとも女性関係がどろどろなの?
市河は胸に浮んだ疑問をすべてぶつけてみたかったが、緒方を慕っているアキラの前で、
緒方の品位を落とすような発言はするべきではないと判断し、沈黙を守った。
そんな“どろどろ”の謎は次の店主の言葉によっていきなり解決した。
「でも、彼女の指摘どおりだと思うよ。緒方君は外食も多くて、おまけに不規則だろ?
 血液がどろどろになってても私は驚かないねぇ」
「…なぁんだ、血液のことだったの…」
つまり。緒方が狙いを定めた女性は23歳の管理栄養士で、緒方の顔を見るなり開口一番、
『あなたの血液は汚れている』と宣言し、全15項目の血液どろどろ度チェックを始めた挙句、
内13項目に当てはまった緒方に、血液をさらさらにすることの大切さを懇懇と説明しだしたらしい。
「緒方さんをつかまえて説教ですか?その女性、相当酔っていたんですね…」
任侠世界の住人にしか見えない緒方に説教を始めるなど、若い女性が素面で出来る事ではない。
もっともらしいアキラの呟きに、緒方の頬が少し弛む。
「見た目は普通そうだったが、あの時点でかなり出来上がっていたんだろうな。しかし彼女の話に付き合った
 おかげでこうして博識ぶれる──血液を流れやすくするには食物繊維と抗酸化物質、それに不飽和脂肪酸」
「よく覚えてるね」
店主が皿を拭く手を止め、感嘆の声を上げた。
「ポリフェノールも活性酸素を掃除する役割があるそうだ。ポリフェノールといえば赤ワイン、
 アキラ君の大好物だな」
「えっ…ええ」
突然話を振られたアキラの顔に狼狽の色が走る。市河はそれを見逃さなかった。
「ワインだけじゃなくて、ビールもウィスキーもなんでも飲むぜ、コイツ」
「進藤!」
「えええええっ!ちょっと待ってアキラ君っ、あなたお酒なんか飲んでるのっ!?」
素っ頓狂な声を上げ、市河は立ち上がった。
あまりの剣幕に、アキラの上半身が20センチ程緒方の方へと傾く。
「い、いえ、その…」
そんな二人の滑稽なやりとりにも全く動じない緒方の向こうで、
ヒカルは心底楽しそうに舌を出して笑っている。



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