マッサージ妄想 11 - 15


(11)
「・・・・・・?・・・・・・?」
呆然として目を泳がせていると、アキラが上半身を少し浮かせるようにしてこちらを睨んでいるのに気がついた。
「あ、塔矢。なんや、寝てしもたかと思ったで」
「・・・・・・どうして・・・・・・」
「は?」
不機嫌そうなアキラの顔を見てハッとする。
もしかして浴衣の裾を直そうとしたのを、アキラが寝てしまったのに乗じて不埒な行為に及ぼうとした
ものと取られたのだろうか。
(そ、そんな!あんなしみじみタイムの後にそんなことしようとしたらただの助平親父やん!
オレはそんな人間やあらへん!濡れ衣や、誤解なんや塔矢!)
口をパクパクさせている社の顔をしばらく見つめてから、アキラはふて腐れたような声で言った。
「・・・・・・誰がもうやめていいと言った・・・・・・」
「へ?」
「ボクはまだ眠る気なんかない。だから」
上体を布団の上に下ろし、ぱふ、と枕に頭を戻しながら、アキラは言った。
「もっと、して欲しい・・・・・・」
先ほどまでとは打って変わって切なく潤んだような瞳でねだられて、漸く誤解されていたわけではない
ということに気がついた。
(ならそうと口でゆうてくれたらええのに・・・・・・何も蹴っ飛ばさんでも・・・・・・)

とは言えあの塔矢アキラからそんな風に甘えられて悪い気はしない。正直、長時間マッサージを
続けた手はかなり疲れていたが、アキラが自分を必要としてくれていることが嬉しかった。
「わかった!ここまで来たら朝までだって付き合うたるわ」
それを聞いて安心したように、アキラはにっこりと極上の笑みを見せてまた枕に顔を埋めた。


(12)
だがアキラの脚に手を戻し張り切ってマッサージを再開した瞬間、今度は先ほどよりも強い蹴りが
シュッと社の耳元をかすめた。
「うおっ。塔矢!?」
飛んできた足首を掴み、さすがに非難を込めた眼差しでアキラを見る。
アキラは黙ってうつ伏せたまま、ギュッと枕を抱き締めるようにしている。
「なんか気に入らんことあったら口でゆうてや。毎回こうならこっちの身が保たんわ」
「・・・・・・」
溜め息をついて社がアキラの脚を布団に下ろし、再び揉み始めて暫く経つとアキラが漸く言葉を発した。
「痛い・・・・・・」
「あっ?力入れ過ぎたかスマン。これでどや」
「まだ痛い・・・・・・」
「こんなもんか」
「もっと、優しく・・・・・・」
「・・・・・・こうか」
枕に顔を埋めたままアキラが小さく頷いた。
だがここまで力を抜いてしまうと、もうマッサージという感じではない。さわさわと軽く表面に触れているだけだ。そもそもそんなに強く力を入れてもいないのに、痛いなどということがあるはずがない。
「・・・・・・」
手を止めてチロリとアキラのほうを盗み見ると、アキラもまた片目だけこちらに向けて様子を窺って
いたのと目が合った。
その途端、アキラがパッとまた枕に顔を伏せる。
この位置からだとよく見えないが、つややかな黒髪の隙間から覗く耳と首筋が普段より赤く染まって
いるような気がする。
それに気づいて、社はあのうねるような衝動が再び暴れ出すのを感じた。
太腿の白さと、今まで敢えて想像しないようにしていた浴衣の下の細腰とが急に生々しく意識の中にせり上がってくる。


(13)
試しに人差し指と中指の先を揃えて、ほっそりと締まった足首からふくらはぎの途中まですうっと
撫であげてやると、アキラはピクリと身を竦ませたものの何も言わず、息を潜めて社の手の動きを
追っているようだった。
それを確認してから更に上へとゆっくり指を滑らせ、透けるように白い膝裏を軽くくすぐってから、
捏ねるように押し揉む。
はぁ、とアキラが切なげな溜め息を洩らす。
それを合図に、社は浴衣の裾に手を差し入れ、隠された太腿をぐっと掴んだ。
「あっ・・・・・・」
アキラが枕の上でかすかに頭を起こす。
それに構わず社は両手でアキラの太腿を緩急をつけて撫でさすり、同時にじわじわと裾を捲り上げていく。
紺の浴衣の裾がアキラの尻のすぐ下辺りまでくしゃくしゃに捲り上げられ、腿からふくらはぎ、
足首へとすらりと伸びた白い両脚の全容が露わになる。
(ああ、綺麗や・・・・・・!)
賛嘆の溜め息を一つついて、感極まったように社はその白く輝く太腿にむしゃぶりついた。

「んっ、うぅん、ん・・・っ、・・・・・・社・・・・・・っ!」
舌で膝裏の窪みの敏感な部分を舐め回しながら右手でふくらはぎを揉みしだき、左手は太腿の内側に
差し入れてしっとりと汗ばみ始めたその感触を存分に楽しむ。
「塔矢・・・・・・」
内腿に這わせた指を煽るようにざわめかせてやると、答えの代わりにハァッ・・・、ハァッ・・・と
早くも切羽詰まった喘ぎが返ってくる。
うつ伏せたままのアキラの脚を抱き、よく湿らせた唇で太腿の表面を食むように吸い付いては離し、
ぎりぎりまで捲り上げられた裾の中へと逸る手を差し入れてみて、社は思わず手を止めた。
驚いてアキラを見ると、アキラは横顔を真っ赤にして目を閉じ、切ない呼吸を繰り返している。
浴衣一枚の下は、アキラは何一つ身に着けてはいなかったのだ。


(14)
「塔矢」
アキラの背面からそっと包み込むように覆いかぶさり、耳元まで唇を寄せて囁く。
「初めっから、こうさせてくれるつもりやったんか」
浴衣の下の素肌に直に触れられて身を震わせながらアキラが頷く。
ならさっき社が布団に押し倒した時にでも応じてくれればいいようなものだが、どうもアキラにとって
社は常に自分の顔色を窺い、尽くすべき存在として位置づけられているようで、
そんな社を自分が誘惑するのはいいが社が自分を押し倒すのは我慢ならないといった意識があるらしかった。
(さっき塔矢はオレを優しいゆうたけど・・・・・・それってつまり、都合のええ男思われとるゆう
ことかもなぁ。なんや寂しい気もするけどこれも惚れた弱味や。しゃあないわな)
そのくせアキラは一度抱き始めればとめどなく続きを求めて止まらないことがあった。
今もアキラは熱っぽい声を切なくかすれさせて社を煽る。
「・・・・・・今日は久しぶりに会ったから・・・・・・なんでもキミの好きなようにしてくれていい・・・・・・」
頬を紅潮させ、涙ぐんだような瞳で囁き返されて、一気に股間が固くなる。
「エエんか」
アキラはコクンと頷いて身をよじり、両腕を社の首に絡めて来た。

浴衣の下に入れた右手をかすかに動かしただけでアキラの全身がビクンッと大きく震え、
社の首に回した両手に力が籠もる。
焦らすように手の動きを止めて顔を近づけると、待ちかねたように形のよい唇が開くから
薄紅色に濡れた柔らかなそこに舌を深く差し入れ、口腔内の粘膜の感触をじっくりと味わう。
呼吸が苦しくなったアキラが横を向いて逃れようとするのを顎を捉えて固定し、
口中に溜まった二人分の唾液を唇の端から零そうとするのをクッ、と上向かせて無理に嚥下させると、
アキラの白い喉がゴクリと鳴った。


(15)
次いでアキラを再びうつ伏せにさせ、裾を完全に捲り上げて小ぶりな白い双丘を剥き出しにする。
そこに両手を当て、先ほどまでのマッサージの延長のようにやわやわと揉んでやるとアキラは甘い悲鳴を上げた。
「ハァッ!・・・・・・あぁ・・・・・・んんっ!」
「前から思うとってんけど・・・・・・アンタホンマに好きモンやなぁ」
わざと呆れたように言うとアキラはキッと顔だけこちらに向け、潤んだ目を悔しそうに眇めて唇を噛む。
だがそれもすぐ社の手の動きに押し流されるように、蕩けるような喘ぎ顔に取って代わられた。
(うぉっ!その顔ええで塔矢!)
魅入られたようにその表情から目が離せない。
すぐにもその細腰を掻き抱き、己の欲望の塊を突き立てたい衝動を抑えて聞いてみる。
「気持ちエエか、塔矢」
「ん・・・・・・」
「エエならエエゆうて」
「・・・・・・気持ちいい・・・よ・・・・・・」
「もっかいゆうて」
「・・・・・・気持ちいい・・・・・・」
「もっかい」
「・・・・・・何回言わせるつもりなんだ・・・・・・」
「そんなん、何遍でも聞きたいやん。なあゆうて、塔矢、ゆうてやー」
我ながら子供っぽいと思いながら甘えた声で急っつくと、アキラは目を閉じて息を洩らしながら言った。
「気持ちいい・・・・・・社」
「ウン」
「気持ちいい・・・・・・」
アキラの口から言わせて満足した社はスッと身を引き、疼く股間をなんとか宥めて前屈みでアキラの足元へと移動する。
「・・・・・・?・・・・・・」
まだ熱に浮かされたような表情で、状況が飲み込めず見つめてくるアキラに社はにっと笑って言った。
「素直なお客さんにはサービスや。もっぺん爪先からじっくりホグしたるわ」



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