盤上の月 17


(17)
その時ヒカルは いきなりアキラの方へ振り向き、「・・・塔矢、さっきからオレを 
じっと見ているみたいだけど、オレの顔になんか ついているのか?」と、アキラを見た。
「えっ、なっ なに進藤!?」とアキラは ひどく慌てて狼狽した。
「なんか言いたい事があるんなら言えよ。」と、ヒカルは大きな目で じっとアキラの瞳を
覗き込むような目つきで見た。
「・・・いや、その・・。」
アキラはヒカルを見ていた視線で自分の気持ちがヒカルに気付かれてしまったのではないかと
思い、強い不安が胸に広がった。
アキラは熱で頭がボーとしていて気付かなかったが、ヒカルの瞳は戸惑いの色が濃く浮かび上がり
複雑な影をチラチラと垣間見せていた。
そして とっさにアキラの口に出た言葉は、
「しっ、進藤の字はミミズが這うみたいに汚い字だなあと思って。」──だった。
口に出した途端「しまったっ!」とアキラは後悔したのも束の間、
ヒカルは目の前で みるみる顔を赤く高揚させて、
「ウッセぇえーなぁあっ! 余計なお世話だっつーのっ!!」と、
図書館の実習室に響き渡るくらいの大声を張り上げた。
「おまえが言うとマジでムカつくんだよっ!」
アキラはヒカルの言葉にカチンときて、ムッとした。
「あのミミズ張りの字はキレイだと おせいじを言って欲しいのか?」
「自分の字はキタナイって自覚はあるんだよ、コレでもっ!」
「自覚があるんなら上手くなるように練習しろよ!」
「 ──!? おっ、おまえにそこまで言われる筋合いはねぇよっ!!」
ここまでくるとアキラも もう後には引けなかった。
その時、アキラとヒカルの前に、薄笑いを浮かべた図書館職員の中年男性が立っていた。
「図書館は静かに使用しないと御利用出来ません。速やかにお帰りください。」と言った。
アキラとヒカルは思わず顔を見合わせてアキラは顔面蒼白になり、
ヒカルは「ヤベー。」と舌を出し顔をしかめ、職員に向かって苦笑いした。



TOPページ先頭 表示数を保持: ■

Gポイントポイ活 Amazon Yahoo 楽天

無料ホームページ 楽天モバイル[UNLIMITが今なら1円] 海外格安航空券 海外旅行保険が無料!