盤上の月 23


(23)
──そうだ。去年の暮れも やっぱりこんな感じで雪が降っていた。
オレはあの日から塔矢に対して別な気持ちが出てきたんだ。あの時 塔矢がオレにキスした時から、
何かが変わり始めた。
オレは もしかして塔矢のこと・・・好きなんだろうか・・・。
初めてヒカルは自分の中に芽生えた感情に正面から向き合った。

アキラとヒカルしかいない邸宅は沈黙が深まり、やがて部屋にいる2人の周辺に静寂という名の
闇が訪れた。
音もない深閑とした空間にいると頭の隅々が冴え渡り、自分の心の中の気持ちがハッキリと見える
ようだなあ・・・と、ヒカルは思った。
「・・・オレってホモの気があったのかなあ・・・?」
ヒカルは複雑な表情をし、アキラの顔をじっと眺めた。まさか自分が男を好きになるとは思っても
みなかった。
ヒカルの初恋は5歳の時で、相手は幼稚園の若い女性の先生だった。その頃 あかりはひどく毎日
不機嫌だったのをヒカルはよく覚えている。
──考えてみればオレが囲碁を始めてプロ棋士になるなんて、あの頃は夢にも思わなかったしなあ。
何事も自分の思い通りには成らないということなのかなあ。
・・・佐為のことも そうだった。
ヒカルは目をつぶり、深く息を吐いた。
「・・・塔矢、おまえはオレのこと どう思っているんだ? あの時、なんでオレにキスなんか
したんだ?」
ヒカルは思わずアキラに向かって問いかけたが、アキラは深い眠りに落ちているらしくスースーと
小さな寝息を立ていて返事は返って来なかった。
「・・・おまえは いつも強引にオレを別の世界に引きずり込むんだな・・・。」
ヒカルはアキラの寝顔を見つめながらボソッと呟いた。そんな自分にさせたアキラを好きなのか、
それとも憎らしいのかヒカルは答えが出せなかった。
──ったく、ナントカ言えよ! バカヤロー!!
と、心の中でアキラに強く怒鳴った。

外は やがて夜になり、雪は音もなく静かに降り続けた。



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