盤上の月 24
(24)
ヒカルは少しの間だけ寝ていたと思っていたが、腕時計を見ると すでに18時を過ぎていた。
「あれオレ、2時間近くも居眠りしてたのかあっ?」
ヒカルは胡坐を解いて立ち上り窓の方へと歩いた。外は すっかり陽が暮れて真っ暗になっており、
そして雪は まだ降り続いていた。
手入れの行き届いた庭に うっすらと雪が積もり辺りを白く染めていく。
「・・・うぅぅん・・。」
後ろから声が聞こえて振り返ると、アキラは息を荒々しくし額に汗を滲ませていた。
「塔矢、苦しいのか?」
ヒカルは慌ててアキラの側に寄り、額に手のひらを当てた。
「スゲぇ熱だっ!」
急いで立ち上がりヒカルは水の入ったボールを持ちアキラの部屋を出た。台所で水を捨て、ボール
の中に新しい氷と水を入れ、タオルを浸して固く絞りアキラの額の上に置いた。
「塔矢ゴメンな。ホントは氷枕とかのほうがいいんだろうけど、人ン家は 何がどこにあるのか
よく分からなくて・・・。」と、ヒカルは すまなさそうに呟いた。
熱にうなされてアキラは深い眠りから浅い眠りになりつつあった。
アキラは夢の中でも碁を打っている時がある。そんなときは自分が夢を見ているのだと自覚がある。
でも最近見る夢は以前とは違い、特定の人物が現れる事が多くなった。その人物に触れようと
すると霧のように消えてしまう事が ほとんどだった。
熱にうなされアキラはフッと目を開けた。
そこには自分を心配そうに見るヒカルが おぼろげにアキラの瞳に飛び込んできた。
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