盤上の月 25


(25)
アキラは毎晩 浅い眠りの夢に現れる人物──ヒカルに向かって思わず手を伸ばした。
すると いつもと違ってヒカルに触れる事が出来た。
それどころか自分が差し出した手を握り返してきた。

―――捕まえた。もう離さない・・・!

普段は自制心で欲望を必死に抑え込んでいるアキラだが、夢の中は理性を乗り越えて抑えている
欲望が溢れ出し、自分が真に渇望するものの姿・形が鮮明に浮き上がる事が多かった。
熱にうなされてアキラは夢と現実の区別が出来なくなっていた。熱はアキラから理性を奪った。
──これは夢だから何をしてもいいんだ。
アキラは自分の欲望に躊躇なく進んで身を沈めた。

「・・・塔矢 どうした?」
アキラは握り締めているヒカルの手を自分の方へ思いっきりグッと引っ張った。
「うわあぁあっ!?」
ヒカルはアキラの体の上に重なった。
驚いてアキラの顔を見ると そこには獲物を生け捕るかのごとく鋭い眼光を放ち燃えるような
二つの瞳がヒカルに注がれていた。
あまりにも凄まじく激しい炎のようなアキラの瞳を見てヒカルは絶句した。
でも その瞳は初めて見るものではなく、何処かで見たような気がした。
──この目をオレは幾度か見たことがある!
そうだ、まだ小学生の頃 塔矢が佐為に再度対局を挑んだ時、また中学1年の囲碁大会の時、
そしてプロでのオレと塔矢の初対局の時の目だっ!
でも対局以外に こんな塔矢を見るのは初めてだ。
ヒカルは思わず恐怖を感じたが、アキラの燃えたぎる瞳に惹きつけられ目が離せなかった。



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