マッサージ妄想 27 - 28


(27)
ドクリと心臓が怯む。
アキラは社の手首をがっちり押さえ、その手の平に溜まった精液と唾液の混合物を眺め下ろした。
その視線に薄汚い自分を見透かされるようで泣きたくなる。
「と、塔矢、ホンマに悪かった。もうこんなこと二度と、」
叱られる予感に怯える子供のように涙声で謝ろうとした矢先、顔を上げたアキラの表情に社は
言葉を失った。
汗と涙と社の体液にまみれた顔で、アキラは勝ち誇ったようにニッコリと笑って見せたのだった。
次いでアキラは髪が落ちて来ないように両耳の辺りで押さえると、社の両手が作った椀に顔を伏せ、
ピチャピチャと赤い舌を躍らせて白濁の混合物を舐め取り始めた。
「ふっ・・・・・・ん、・・・・・・・ん・・・・・・」
「・・・・・・」
呆気にとられている社をよそに、アキラはかなりの量だったそれを喉を鳴らしながら平らげ、
社の両手首を掴み上げると手の平の皴や指の股に溜まっている分まで舌でこそげ取った。
自分の手首や顎、胸や腹部に落ちた分をも指で掬い上げ綺麗に舐め取る。
それから漸くアキラは、ふうっ・・・・・・と満足そうに息をついた。
「え・・・と、その・・・・・・怒ってへんの」
「え、何を?」
意外そうに問い返されて言葉に詰まる。アキラは指の甲で口元を拭い、少し頬を赤らめて言った。
「確かにさっきは、キミがボクから逃げるような素振りを見せるから頭に血が上っちゃった
けど・・・・・・でも結局こうしてたくさんくれた、から・・・・・・もういいよ」
手を伸ばし、社の人差し指を口に含むと強く吸い上げ、ちゅぽんと離す。
それからまたアキラは嬉しそうに笑った。


(28)
(わからん・・・・・・健気なんか淫乱なんか、やっぱコイツ、オレの理解の範疇超えとるわ)
それが自分とアキラの器の違いを思い知らされるようでもあり、またアキラをこんな、
男の精液を舐めて喜ぶような人間に育て上げた誰かの影を見せ付けられるようでもあって、
胸のどこかがチクリと痛む。
だがあらん限りの媚態を尽くして男を誘い、満たされて無邪気に微笑むアキラはつくづく
愛おしいと思う。淫らで、憐れで、時に腹立たしくて、堪らなく愛おしい。
何でもしてやりたい。望むものを全部与えて満たしてやりたい。
そのためなら自分の人生すら捧げられる気がするのだ。
たとえ自分がアキラにとって一番の相手には永遠になり得ないのだとしても。
「ねえ、社?」
両手を後ろにつき白い脚を軽く開いてみせてアキラが言った。それはさっき自分の手が
さんざん揉みしだき、嬲りものにし、慈しんだ脚だ。
濡れた感触が手に甦る。
白い両脚の間に、赤らんだ欲望の証がドクドクと脈打って涙を流している。
その脈動につられるように新しい脈動が自分の体内に芽生え、然るべき場所に力を与えるのを社は感じた。
「さっき、ボクの欲しいものは全部くれるって言ったよね?ボクの欲しいもの、まだ終わってないよ」
「・・・・・・ああ・・・・・・そうやな・・・・・・!」
今は、何もかもどうでもいいと思った。
勢いよく覆い被さって抱き締めてやるとアキラの嬌声が耳に響く。
そのまま両脚を抱え上げて、深々と繋がった。
泣くような喜ぶようなアキラの声が、社の鼓膜と全身を蕩かした。

「やしろ、」
果てる直前の熱の中で、うわ言のようにアキラは囁いた。
「社は優しいから好き・・・・・・ボクはこんな人間だから、キミに理解してもらえない部分も
あるかもしれないけど、勝手だけど、それでも、優しくしてくれるキミが好きだよ・・・・・・」
ウン、ウンと頷きながらアキラを揺さぶって、白い手が撫でてくる頬は自分でも何が何だか
わからないくらい濡れていた。
やがて痙攣し締め上げてくるアキラの感触に、白い熱が網膜の裏で弾けた。



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