マッサージ妄想 29 - 30
(29)
翌朝。
「洗面使い終わったよ、どうぞ。・・・・・・何してるんだい」
冷水で洗顔したために普段より少し血色が良くなっているアキラが勢いよく襖を開けた。
「うぉっ、いきなり開けるなや。洗面空いたか。オレも顔洗って来よ」
部屋の隅に向かって正座し何やら身を低くしていた社はサッと立ち上がると、
整髪料やら何やらアキラには正体もわからないものがどっさり入ったビニール製のバッグを
引っ掴んで洗面所へと消えていった。
(?これを見てたようだけど・・・・・・これ、お父さんたちへのお土産?)
アキラが洗面所にいる間社は交通機関の時刻表のチェックをしていたが、
ふと昨夜情事の最中にも見たアキラの両親への土産物である夫婦茶碗の桐箱が目に止まり、
思わず居住まいを正して深々と頭を下げたところだった。
だがもちろんアキラはそんなことは知らない。
まだ頬に残る水滴をタオルで押さえながら桐箱と、社の消えた襖の向こうとをチラッと眺めやると、
「ボクは、お片づけ!」
と一言呟きアキラは荷物の整理に取り掛かった。
「社、これ洗って返すね」
社が首にかけたタオルで顔を拭いながら部屋に戻って来ると、アキラは大きめの黒いTシャツを
膝の上で丁寧に畳みながら言った。
「あ?あ〜、アカンて!それはオレが持って帰るわ」
社の手がそれを引ったくった。
(30)
昨夜ことが終わったあと、眠り込みそうになるアキラの頬をぴちぴち叩きながら
社はアキラに湯冷ましを飲ませ、身体を洗わせ、くしゃくしゃになった浴衣の代わりに
予備で持参していた自分のTシャツを着せてから寝かせた。
こざっぱりと乾いた黒Tシャツに包まれたアキラの身体はふんわりと石鹸の匂いがして、
裾から伸びた白い脚に、洗い落とせない赤い跡が幾つも散っていた。
「どうして?ちゃんとクリーニングに出すよ」
「そんでまた大阪に送り返すか?そんな手間掛けられへんわ」
「でも、ボクが着た物だし」
「アンタなあ、オレら昨夜ハダカの付き合いした仲やろが。今更ちょっとシャツ借りたくらいで
何ゆうとんねん。水臭いで」
ビシッと斜め角度で視線を決めながら言ってやった。
「そう?じゃあご好意に甘えさせてもらおうかな。・・・・・・これ、ありがとう。助かったよ」
「ん」
ぶっきらぼうな態度で、綺麗に折り畳まれた黒Tシャツを受け取りながら社が
(っしゃ――――――!塔矢ナマ着用Tシャツゲットォォォ!)
と心の中でガッツポーズしていたことなどアキラは知らない。
夫婦茶碗に向かって頭を下げようとやはり十代の煩悩が尽きることはないのだった。
スポーツバッグの中にせっせと荷物を詰め込んでいく社の手元を、既に荷物を作り終えて
しまったアキラはぼんやりと眺めた。
「荷物多いね・・・・・・社」
「出先で何があるかわからへんからな。予備の服に下着にタオルやろ、救急セットに七徳ナイフ、
ミネラルウォーター、懐中電灯に単3電池、おさいほーセットまで持って来とるで」
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