盤上の月 31


(31)
渋々ヒカルは寝巻き用のジャージに着替え、ベッドに潜り身を横たえると、すぐ強い眠気が襲って
きた。まだ性的に幼いヒカルには、体内から込み上げる熱より眠りの誘惑の方が上回る。
「・・・・・・・疲れた・・・・・」
ヒカルの意識は そこで途切れた。
雪は徐々に降る勢いを弱め、しばらくして止んだ。あまり積もらなく翌日には陽の光に溶け、
すぐ姿を消した。

アキラが目を覚ましたのは、ちょうど雪の消えた昼近くだった。
しばらく布団の中でウトウトしていたが、急に喉の渇きを覚え、だるい体を起こし厚手の白い
カーディガンを羽織って台所へ行く。蛇口をひねりコップに水を入れて一気に飲み干すが、
それでも まだ乾きが癒えず、もう2杯水を飲んでやっと一息つく。そして朦朧としていた意識が
元に戻っていく中、自分は どうやって家に帰ったのだろうかと思った。
「・・・・・確か進藤と図書館に行き、その帰りに具合が悪くなったまでは覚えているんだけど・・・」
思い出そうとする瞬間、頭にズキンと鈍痛が走り思わず顔を歪める。またアキラは自分が身に
付けている上着が昨日と違う事に気付いた。その時、パタパタと廊下を歩く足音が耳に入った。
その音は こちらに向かっている
──お父さん達は まだ韓国から帰国していない。じゃあ、いったい誰が家にいるんだ?
廊下の方に顔を向けると居間の戸がガラッと開き、エプロン姿の晴美が両手に洗濯物を入れたカゴ
を持って姿を現した。
「あら、アキラくん起きてたの。どう体の調子は?」
「──!? あれ市河さん、どうして ここにいるの?」
「昨日、碁会所に進藤くんが電話をくれたの。夜遅くまで私と一緒に看病手伝ってくれたのよ」



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