盤上の月 36


(36)
ちなみにヒカルは、この時点ではまだ水曜日の低段者手合い日に来ていた。
アキラはヒカルの碁の才能を誰よりも理解しているので、近日中に自分と同じ手合い日に来ると
信じて疑わない。
一日くらい手合いを休んで体を労わってもいいと思うのだけど・・・・・・。
体調の良し悪しは、対局に色濃く影響する。が、あくまでも棋士として仕事を優先しようとする
アキラに感心しながらも、晴美は つい心配顔になってしまう。
「でも、市河さんには本当に迷惑ばかりかけ、お世話になりっぱなしだなあ・・・」
すまなさそうにアキラは言う。
「遠慮なんかしないのアキラくん。私に出来ることがあるなら何でもするわよ」
晴美はアキラの看病で邸宅に足を運んでから心に引っかかっていた事があり、それを切り出す機会
を密かに伺っていた。そして聞くのは今しかないと思い、おずおずと口を開く。
「ねえアキラくん、その・・・・最近何か悩んでいることとかない・・・・・・?」
その途端、アキラの顔が一瞬強張るを晴美は見逃さなかった。
「・・・別に何もないよ。心配性だなあ、市河さんは」と、アキラは晴美の問いかけに冷静さを
保ちながら はぐらかす。
「そう・・・・・? なら別にいいのだけど・・・・」
晴美は怪訝な表情を露骨に表したが、あえてそれ以上は詮索しなかった。例え何かあったとしても、
それを自ら進んで人には話さなく、胸の内に封じ込めてしまう・・・そのような片意地を張り通す
ところがアキラにあるのを晴美はよく知っていた。やっぱり聞くだけ無駄だったかと、眉間にシワ
を寄せながらお茶を飲んでいると、いつかの情景が晴美の瞼に昨日の事のように思い出された。



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