マッサージ妄想 39 - 40


(39)
「それに」
小さな声が囁き、白い指が社の袖口をちょっと摘んで引っ張る。
「昨夜ボクは、キミが優しくしてくれるから好きって言ったような気がするけど・・・・・・
それも確かにあるけどそれだけじゃなくて、ボクはそうやって自分より相手のことを考えて、人に優しくしてあげられるキミが好きなんだ。ボク自身はあまりそういうの、得意じゃないから、
キミは凄いと思う。だから、ボクの知ってるキミの優しさを、キミのいい所を、
キミのお父さんたちにも早く知って欲しい・・・・・・」
目を伏せたままの、アキラにしては珍しくつっかえつっかえの言葉だった。
それでもそれを受け取った耳から、温かなものが全身に広がっていく。
アキラの「好き」がどの程度の感情を指して「好き」なのかはわからなかった。
それでもそんな風に思ってくれていたことが嬉しかった。
(ま、優しいゆうても惚れた相手に特に優しいゆうのはあるねんけどな。それは言わんとこ)

その時漸く、店の奥から店主が箱を抱えて戻ってきた。
「エライお待たせしてもうて。すぐ包みますさかい、先にお勘定のほうよろしいですか」
「あ、ハイ。お願いします」
「待ち。払うのはオレや」
「え?でもボクからご両親に」
「いや、コレやっぱり、オレから親へ買うてくわ。それに、アンタの話聞いてたら・・・・・・
なんやエライやる気出てきたゆうか、細かいこと色々考えるの馬鹿らしなって来た」
たとえ父親たちが冷たい反応を返してきたとしても、いいと思った。
優しい自分を好きだと、その優しさを早く父親たちにも知って欲しいと、アキラは言ってくれた。
この先父親たちとの間に何があっても、その言葉が自分を支えてくれるだろう。
いつか分かり合える日まで、腐らず努力していけるだろう。
それに自分が親に土産を買って帰る程度のことで、自分と親の関係に関するアキラの心配が
少しでも晴れるなら、もうそれで十分だとも思った。


(40)
「ウン、まぁ、そういうわけや。おっちゃん、おかんじょお願いします」
財布を手に向き直ると、店主が首を傾げて二人のやりとりを聞いていた。
「坊ん、親御さんへのお土産か」
「あ?ウン、まぁ、そやけど」
面と向かって聞かれるとやはり気恥ずかしいものがあった。ましてやこの店主はさっきまで
自分を胡散臭そうな目で見ていた人物だ。敵に恥ずかしい所を見られてしまったような気分になる。
だが店主は目を丸くし、「へええ、そら感心やわ。こんくらいの年の男の子が親御さんに
夫婦茶碗をなぁ」と大袈裟なくらいに頷いてみせた。一瞬皮肉を言われたのかとも思ったが、
どうやら本気で感心しているらしく、釣り銭を渡しながらポンと腕を叩いてくる。
「坊ん、自分、見かけによらずなかなか殊勝やんか、なぁ」
「見かけによらずは余計やで、おっちゃん」
「ハハハ。そこで待っとき。今包むさかいな」

一見不良のような髪をした今時の若者が、意外にも親孝行な純情青年だった。
そんな心温まるシチュエーションが効いたのか、上機嫌の店主は包装をしながら早口で良く喋った。
社も一旦打ち解けてしまえばこの年代の親父とのコミュニケーションは慣れたものである。
早口の関西弁でぽんぽん進む会話を、アキラは黙って微笑みながら聞いていた。
「ヨシ、出来たで。坊ん達もな、こっらこの人や!と思う彼女が出来たらまたウチに来て、
夫婦茶碗でも買うて行ってな」
ニコニコ笑いかけてくる店主と、会話の気安い雰囲気につい口が滑った。
「イヤー、おっちゃん。揃いの茶碗使うならオレ、女よりコイツと使いたいねん」



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