マッサージ妄想 49 - 50


(49)
一瞬、アキラの表情が安堵するようにふわりと和らいだ。
だが次の瞬間にはアキラはまたキュッと唇を噛み、苦しげに目を伏せてしまう。
「・・・・・・なんでそないなこと今更聞くんや。オレら、オレがアンタのこと好きやゆうて
始まった関係やんか。・・・・・・オレ、アンタに無茶苦茶惚れとんのやで」
目を伏せたままのアキラの頬が、少し赤く染まった。
(お?)
それに気を良くしてアキラの顔を覗き込み、真顔で更に攻めてみる。
「なぁ、好きやで塔矢。めっちゃ好きやねん。惚れとるわホンマ。世界で一等。アンタが大将」
社が顔を近づけ畳み掛けるたびに、アキラの顔はますます赤くなり俯いてしまう。
「わ、わかったよ。もういいから」
「そか。わかればエエんや。・・・・・・そやからな、オレ、アンタに悲しそうな顔とかして
欲しないんや。オレの言ったこととか行動がアンタの悩みの種になっとるなら、言って
くれれば全部直す。迷惑にならへんよう気ぃつけるから・・・・・・そやからそんな顔せんといてや、塔矢」
下からのアングルで覗き込んだまま、両手でアキラの小さな顔をそっと包み込む。
次いで両の親指でアキラの唇に触れ、人差し指と中指で左右の耳朶の後ろをあやすように軽く
くすぐってやると、アキラの瞳がたちまち甘く潤み赤い唇が軽く開いた。
(え、)
濡れた瞳が昨夜の情景を思い出させ、社の身体の芯に緊張を走らせる。
そのまま指で皮膚を辿り首筋にそっと滑らせると、アキラは「あッ」と小さな声を上げて
かくんと首を竦ませた。
「ん・・・・・・ぅん・・・・・・っ」
「と、塔矢・・・・・・?」
さっきまで思いつめた表情をしていたアキラが今は目を閉じ、うっとりと指の動きを追っている。
そのあまりに急激な変化に戸惑いながらも、社は魅入られたように唇を寄せ口付けようとした。
それに応えるようにアキラの唇もゆっくりと開く。

だが次の瞬間、アキラははっと驚いたように目を瞠り、飛び退いた。


(50)
「塔矢!?どないした」
「・・・・・・!」
その時一台のトラックが音を立てて社の後方から現れ、二人のいる歩道の横を通り過ぎて行った。
「あっ・・・・・・そか。スマンッ」
「え?」
アキラはまだ目を潤ませ、社に触れられた首筋を押さえながら息を整えている。
社は歯噛みした。裏通りとは言え人目がないわけではない。自分が欲望に流されてここで
アキラにキスなどして、もしも誰かに見られたらどうするつもりだったのか。
自分はともかくアキラは世間からの注目度も高い。国際戦デビューとなった北斗杯で中・韓の
棋士相手に白星を挙げてからは特に、日本囲碁界復活を導く若手旗手として一般誌でも時折
彼の特集が組まれるようになった。
端正な容貌や元五冠トップ棋士の息子という話題性も相まって「碁界のプリンス」的な扱いを
されることも多く、一度などカメラマンの指示だったものかどうか、雑誌の表紙を頬杖&
ウインクで飾るアキラを電車の中吊り広告で見た時は満員電車の中で鼻血を吹きそうになったものだ。
(そや、塔矢は顔を知られとる・・・・・・それが道のど真ん中で男とチューしてたなんて噂にでも
なったらエライこっちゃ!何やっとんのやオレ!ったく、しっかりせーや!)
「ここかて人通りあるもんな。迷惑にならへんよう気ぃつけるゆうた矢先やのに、考えなし
やった。スマン」
「・・・・・・社のせいじゃない。キミは何も他意があってボクに触ったわけじゃないんだから。
悪いのはボクだよ。何でもないはずのことにいちいち反応してしまうボクが悪いんだ。ボクが
こんなだから・・・・・・」
「あ?」
やたら深刻そうなアキラの態度を不審に思った。



TOPページ先頭 表示数を保持: ■

テレワークならECナビ Yahoo 楽天 LINEがデータ消費ゼロで月額500円~!
無料ホームページ 無料のクレジットカード 海外格安航空券 海外旅行保険が無料! 海外ホテル