マッサージ妄想 55 - 56
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「アンタの気が多いことくらい初めっから知っとるわ。それを承知で好きになったんやから・・・・・・
オレの本当の気持ちはまぁさっきゆうた通りやけど、だからって今すぐオレを一等好きになって
くれなイヤやーゆうわけでもないし、口に出して聞いてもらって却ってスッキリした。で、
これからも今までどおりの関係続けながら、いつかアンタが振り向いてくれるよう努力して
行けたらて、そう思おとる。アンタに他に好きな奴がおっても、オレが好きなんはやっぱり
アンタやから・・・・・・そやからもしアンタもオレを好きで、オレが側にいても迷惑やないゆう
なら、別れるなんて考えんで、これからも一緒にいさせて欲しい・・・・・・」
しかしアキラは目をきつく閉じ、ぶんっぶんっと頭を横に振った。
「・・・・・・なんでや」
「本当は、・・・・・・誰でもいいんだ」
社に手を取られ深く項垂れたまま、絞り出すような声でアキラが言った。
「え?」
「キミのことは好きだし、他に好きな人がいるのも本当だけど・・・・・・ボクは本当は、男の人
なら誰でもいいんだ。話したこともない相手や、人間的には大嫌いだと思うような人にまで
欲情してしまう。昔からこうなんだ。電車の中で隣に男の人が立っただけで、その衣服の
下を想像して堪らなくなることがある。こんな自分はおかしいと思うけど、一度身体の奥が
カッカし出すと止まらなくて・・・・・・さっきだって、キミに少し触れられただけでもう頭の中が
真っ白になってしまって、」
「え、何やて?えーとスマンちょっと待ってや。塔矢」
唐突な話の展開に、一瞬置いていかれそうになる。だがアキラの口からは堰を切ったように
言葉が溢れ出た。
「・・・・・・最近はしてないけど指導碁のお客さんに肩を抱かれてそのままセックスに雪崩れ込んだ
こともあるし、欲望に任せてお父さんの門下の棋士を誘ったこともある。それで相手の人生を
めちゃめちゃにしてしまったことも。ボクはボクと寝たらその人の人生が狂ってしまうだろう
ってわかってた。わかってたのに止められなかったんだ」
俯いて見えないアキラの顔から、大粒の涙が滴り落ちて社の手を濡らした。
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確かにセックス時において普段の明晰さがまるで嘘のように乱れ、貪欲に快楽を求める
アキラの反応には社も驚くことがあった。
だが、アキラや社くらいの年代の男なら誰だろうと多かれ少なかれ頭の中がそういうことで
いっぱいになる時期はあるものだ。
アキラの場合はたまたま相手が男で、人より多少そうした欲求が強いというだけの話ではないのか。
「塔矢、それは・・・・・・まぁ確かに他の奴の人生狂わしたゆうのは問題か知れんけど、」
「キミも言ったよね?ボクは好き者で、ボクの身体はいやらしいって」
突然に、涙を湛えた目で昨夜の己の言葉を返されてショックを受ける。
「そ・・・れは言葉のアヤ言うか、セックスの最中にちょっと気分が高まって言うてもーたことやろ!?
実際セックスの最中なんて誰でもやらしくなるもんやん。俺かてそうや。こっちが一所懸命
色々したってるのにツーンとお澄ましされてたら、そっちのが興醒めやわ。好きモンおおいに
結構やん!オレはそう思うわ」
「でもそれって、好きな人とのセックスの最中に限ってなら、確かにそうかもしれない
けど・・・・・・ボクみたいに相手も所も選ばず年中サカってるなんて、やっぱりおかしいんだよ」
「サカッ・・・・・・」
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