マッサージ妄想 59 - 60


(59)
付き合っているのでも告白されたのでもない、アキラにとって恋愛の対象と見られていないと
いうのであれば、アキラを愛してはいるものの想いを口に出来ないとか、そういった事情の
ある人物なのかもしれない。
だがどんな事情であれ、そんな言葉をアキラにぶつけるのは卑怯だと感じた。
アキラが自分のそうした欲求の強さに悩んでいるのだとすれば尚更、それを知った人間が
彼を理解し、自己否定に陥らないで済むよう手助けしてやらないでどうするというのだ。
アキラの口から出たとおりの言葉をその人物がアキラに投げつけたのだとすれば、
それはアキラに、お前は人を愛するなと宣告したも同然ではないのか。
アキラが誰かを好きになっても、アキラの性癖を知った相手はみな離れていく。その言葉が
アキラを縛り、人と深く関わることに対して怯えを抱かせている。
普段はどんな困難にも屈せず、確固たる信念をもって力強く道を切り拓いていくアキラだというのに。
(そんなに、コイツにとって影響力のある奴なんかいな)
アキラは、自分と父との関係を心配してくれた。優しい澄み切った眼差しで。
そして優しい自分が好きだと、その優しさを早く父親たちにも知って欲しいと言ってくれた。
その時自分は心の芯から温かくなるような感動を覚えたのだ。
アキラは自分では人のことを考えたり優しくしたりするのが得意でないと言っていたが、
ちゃんとそんな風に人を気遣い思いやる、柔らかな部分を持っている。
そしてアキラを知れば知るほど、普段は隠れているその柔らかさに触れてますます惹かれていく
自分がいるのだ。
性的な部分において多少ルーズな面を備えているにしろ、そのこと一つでアキラが誰とも
深く向き合えない人間であるなどとは思えなかった。
(少なくともオレは、コイツから離れる気になんて到底なられへんわ)


(60)
その人物が何を思ってそんな言葉を吐いたのかはわからない。
だが手酷い決め付けるような表現の裏に、どこか自分の言葉でがんじがらめに縛り付けること
によってアキラを誰のもとへも行かせまいとするような、自分がアキラを手に入れられない
ジレンマをアキラを誰のものにもさせないことで晴らそうとしているような、
そんなどろどろとした意思が渦巻いているようにも感じられた。
(ソイツにも色々悩む所があるのかも知れん・・・・・・でも、そやからってコイツに当たること
あらへんのになあ・・・・・・)
自分の手の中で小さく震えているアキラの手に、胸が痛む。

それにしてもアキラをここまで縛り、強大な影響力で支配しようとするその人物とは誰なのだろう。
(・・・・・・塔矢門下の兄弟子とかか?さっきコイツと寝たせいで人生狂った棋士がおるゆう話
やったけど、まぁ確かに師匠の息子に手ぇ出す言うんは冒険やろうしな・・・・・・塔矢行洋て
直接会うたことあらへんけど、なんやマトモで厳格そうなおっちゃんやし、コイツのこと
エラく可愛がって育てたっぽいしなぁ・・・・・・)
チロリとアキラのほうを見る。
心乱れているせいか、涙の名残で濡れた眼を伏せ、落ち着きなく唇を噛んだり離したり
しているアキラは普段の態度からは想像もできないくらい頼りなげで、そしてやはり美しい。
どんな男も心迷うだろうというほどに。
(こんな子ォを手塩にかけて育ててお父さんお父さん言われてたんを、よその男に横から手ぇ
出されてたなんて知ったら、そらもう天地が引っ繰り返るほどショックやろなぁ・・・・・・その上
相手が門下生とかゆうたら、オレならもう即破門!抹殺!って勢いやわ。ん?)
頭の中で何かが繋がりかけて、繋がらないうちに消えた。



TOPページ先頭 表示数を保持: ■

楽天モバイル[UNLIMITが今なら1円] ECナビでポインと Yahoo 楽天 LINEがデータ消費ゼロで月額500円〜!


無料ホームページ 無料のクレジットカード 海外格安航空券 解約手数料0円【あしたでんき】 海外旅行保険が無料! 海外ホテル