マッサージ妄想 61 - 62
(61)
「・・・・・・ミも、・・・・・・ったよね?」
「ン?」
「キミも、ボクのこともう嫌いになったよね?」
見るとアキラは泣き出しそうになるのを抑えるかのように唇を噛み締めながら、黒い瞳で
じっとこちらを見つめている。潤み切ったその眼の縁に、新しい透明な涙が今にも零れ落ちそうに
せり上がる。
「イヤ、なってへんで」
「気を遣ってくれなくていい。はっきりさせたほうがお互いのためだ」
「一人で話進めるなっちゅうねん。今アンタの話全部聞いたけど、そやからって聞く前と
比べてオレの気持ちはなんも変わらへん。そら誰彼構わず寝たくなる言うんは、実際行動に
移してもーたら問題やで。やっぱり相手は、ある程度選ばなアカン!・・・・・・敢えてアンタの
ためとは言わんわ。相手のためや。で、そのせいで人生狂うた奴もおる言う話やったな。
そやけど、ソイツは確かに気の毒か知れんけど、ソイツかてアンタと寝たい思て寝たのやろ。
アンタオレと同い年で、ソイツ多分アンタより年上やろ。アンタから誘ったにしろ、実際に
手ぇ出したんはソイツにも責任あるやん!アンタ一人がそこまで悩まなアカンことなんかいな。
・・・・・・オレ何かおかしなこと言うとる?」
「いや、・・・・・・ごめん、今ちょっと混乱してるみたいで、頭が働かない・・・・・・」
「ウン、そか。・・・・・・ならなんも考えんでエエから、一旦全部置いといて、頭空っぽにして聞き。
・・・・・・とりあえずオレ、塔矢から離れへんよ」
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アキラの眼が驚いたように見開かれる。一瞬涙も引っ込んでしまったかのように。
「塔矢がもうオレに嫌気が差して、顔も見たないとか言うんなら話は別やけど、塔矢もまだ
オレのこと好きやゆうてくれとるのに、こんなことで離れようなんて思われへん」
「こんな話聞いて・・・・・・呆れてないの」
「いや、どっちかっちゅーと細かいこと思いつめて悩むやっちゃなあて、そっちのほうに
呆れたゆうか」
「ボクはこんな奴だから、この先もキミが望むような関係になれるかどうかわからないよ?」
「そやから、・・・・・・自分のこと、こんな奴とかゆーなや。オレが好きで離れへん言うとるん
やからエエやろ。アンタたぶん、一人の奴の言うこと気にしすぎやと思う。アンタにとって
どれだけ大きな存在か知らんけど、ソイツの言う事が絶対正しいなんて限らんやろ。
現にソイツはみんなアンタから離れてく言うたみたいやけど、オレはアンタから離れへん。
・・・・・・ホラ、ソイツ間違うとるやん」
「・・・・・・」
「アンタが他にも好きな奴おる言うのは、そっら正直、寂しいでー!そやけど、それなら
オレがもっとエエ男になって、碁ももっともっと強なって、アンタがよそに目移りする暇も
あらへんくらいメロンメロンにしたればエエんや!そや、塔矢アキラメロメロ計画、本日
これよりスタートや!」
「え、ボクが何だって?メロ・・・」
「まあ、エエやん。とにかく、相手がちょっと自分の思い通りに行かんから言うてそのたんび
投げ出してたら、なんも始まらへんやろ。碁も、恋愛も。・・・・・・オレの親との事もな。
そやから、オレアンタから離れへん。いつかアンタがオレのこと一番好きや思おてくれるまで、
精一杯足掻かせてもらうわ。アンタが嫌や言うてもそうさせてもらう!もう決めた!」
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