マッサージ妄想 66 - 70


(66)
(う〜ん、泣きたい気分の時はやっぱコレやわ・・・・・・)
子供じみた感傷だとわかっていても、アキラが自分と触れ合っていた痕跡を目の前で
あっさりと拭い去る光景は見たくなかった。
折角これからも側にいると約束したばかりなのに、アキラはもうすぐ東京へ帰ってしまう。
(次はいつ会ってこんな風に触れるかわからへんのや。・・・・・・塔矢が手をキレイにしても、
オレは今夜、手ぇ洗わへん!洗わへん・・・・・・)

懸命に口笛を吹く社をアキラはしばらくポカンとした表情で眺めていたが、やがて社が
涙目なのに気づくと、使わないままウェットティッシュの箱を突き返した。
「社が使わないなら、ボクもいいよ」
「遠慮せんと使うたらエエ・・・・・・」
暗く呟いてまた涙目で口笛を吹き出す社の耳に、アキラが軽く溜め息をつく音が聞こえた。
(塔矢、ガキ臭いて呆れとるのやろな・・・・・・守りたいとか面倒かけへんとか言うたくせにって・・・・・・
でも仕っ方あらへんやん!好きなんやから!どうせオレはガキや!我侭モンやー!)
「社、こっち見て」
半ベソで振り向くと、アキラは両手で自らの頬を覆っていた。形の良い手で頬をぴったりと
包み込み、気持ち良さそうに目を閉じて、何度も擦り付けるように顔全体を撫で回してみせる。
まだその手は社の汗でべとついているだろうに、汚いものなんて何もないとでも言うように。
「・・・・・・」
「社。・・・・・・大丈夫。ボクだって離れたくなんかないから」
優しく宥めるような微笑みで言われて、急に自分が取った態度が恥ずかしくなる。
「・・・・・・スマン」
「いいよ。ところで、今日もたくさん歩いたよね」
「あ?ああ」
「ボク脚が疲れちゃって、このまま新幹線で帰るのは辛いみたいなんだ。だから、離れたく
ないついでに・・・・・・」
――もう一晩泊まって、キミにマッサージしてもらおうかな?
社の耳元に口を寄せてアキラが囁いた。


(67)
社は明日学校がある。
明朝、同級生の家に寄って制服を貸してもらう手間も考えた結果、その日は昨夜の旅館から
数駅乗り継いだところにあるこぢんまりとしたビジネスホテルに宿を取った。

「・・・・・・ウン、そうさせてもろたら助かるわ。ほな、よろしく。・・・・・・え?誰と一緒やったかて
エエやんか。・・・・・・あーウン、へへ、まぁそんな感じやけど。あーわかったわかった、
今度奢る!おーごーる!ほならな」
早口で携帯を切って、ベッドの上でほーっと溜め息をつく。
(塔矢、まだ電話しとんのやろか・・・・・・)
社が自宅の留守電と同級生の携帯に連絡している間、アキラも一晩帰宅を遅らせることを
自宅に電話しようとしたが、携帯の電波が悪いからと外に出て行ったまま帰って来ない。
シーンとした部屋の中に一人でいると今日一日の間にアキラと交わしたやりとりがぽつぽつと
浮かび上がってくる。
(・・・・・・とにかく!とりあえずは一歩前進や)
アキラの悩みや、その悩みの大元となっているらしきアキラの本性を、現時点で自分が
完全に理解出来ているとは思わない。
だが互いの本音を吐き出し合ったことで、以前より確実に絆は深まっているはずだと思った。
足りない分はこれからまた埋め合わせていけばいい。自分がアキラを好きでアキラも自分を
好きだと言ってくれている以上、努力次第で何とでもなりそうな気がした。
(そうなるとやっぱり、たまにしか逢われへんゆうのが痛いけど・・・・・・でももう暫くしたら
夏休みやし、そしたらオレが東京に逢いに行ってもエエしな。そや、離れてるゆうても
新幹線で数時間で行ける距離や。何とかなる!)

それにしてもアキラの帰りが遅い。心配になりかけた頃、ドアをノックする音が響いた。


(68)
中からドアが開いて部屋に足を踏み入れたアキラだったが、そこにいるべき相手が見当たらない。
「・・・・・・?」
不思議に思って辺りを見回そうとした矢先、ドアの影に隠れていた社に後ろから不意打ちで
抱きすくめられた。
「あ、」
「お帰りー!なぁなぁ、今の気づかんかった?びっくりした?」
古典的なイタズラで子供のようにはしゃぎ頬を擦り付けてくる社に苦笑しながら、アキラは答えた。
「びっくりしたよ、少しだけね。・・・・・・電話はどうだった?事後承諾みたいな形に
なっちゃったけど、親御さんやお友達はいいって?」
「家には留守電で友達んとこに泊まるって入れといた。友達も、まぁ、だいじょぶや。
塔矢はどやった?・・・・・・アレ、塔矢ちょっと目ぇ赤くなってへん」
横から覗き込んだアキラの目の縁はかすかに赤味が差して、普段なら青いほどに澄み切った
白目の部分が少し充血している。
「え、赤い?そんなことないと思うけど」
アキラが顔を背けて拳で目を擦ろうとするのを押さえ、両手を捉える。その両手が普段よりも
冷えていた。まるで泣き腫らした目を水で洗い冷やしてからこの部屋に戻って来たかのように。
「・・・・・・もしかして、もう一晩泊まる言うてお父さんかお母さんに叱られた?」
「いや、少し目が疲れてて水で冷やして来たから、赤いとしたらそのせいだろう。大丈夫だよ」
「・・・・・・」
「社。・・・・・・あんまり気を遣ってくれなくていいから。今夜もキミといられるだけでボクは嬉しいから」
釈然としない顔の社にアキラは爪先立ちで軽く口付け、「ね?」と子供に言い聞かせるように
微笑んだ。その微笑みに、仄かな寂しさが胸をよぎらないわけではないのだが。
「・・・・・・そやな。オレも、アンタと一緒にいられるだけで嬉しいわ」
無理やりにでも微笑んでみせて、社はアキラを抱き締めその首筋に顔を埋めた。
ゆっくりと顔を傾け、首筋と耳の後ろに舌を押し付けるようにして刺激すると、
先ほどの路上での反応を繰り返すようにたちまちアキラの身体が震え、甘い吐息が洩れ始める。
そのままそこに服を脱ぎ散らかして、すぐ横の浴室へと移動した。


(69)
シャワーの水流が勢い良く浴槽を叩き、水色のカーテンに包まれた小さな世界を
温かな蒸気で満たし始める。
浴槽の縁にアキラを腰掛けさせ、その脚と向かい合う形で社は浴槽内に胡坐を掻いた。

目の前のアキラの脚は昨夜と変わらずすんなりと伸びやかなラインを描いて、その中心を
隠そうともしないまま無防備に開かれている。
昨夜あんなにも白く瑕一つなかった表面に、今は自分の残した赤い跡がいくつも散っていた。
その跡の一つ一つに昨夜の情景を甦らせながら、アキラの片方の足を取ってしみじみと眺める。
(ああ、この足や・・・・・・)
昨夜、次にはいつ触れられるかわからないからと目に焼きつけたアキラの足は、変わらない
温かさで自分の手の内にあった。静脈の透けた足の甲にそっと口づけてからボディソープで
滑りを良くし、昨夜と同じように先端から揉みほぐしていく。
「んっ・・・・・・」
アキラがもどかしそうに小さな身じろぎを繰り返す。
それを無視して泡を立てながら愛撫のような軽いマッサージを足指から足の裏、足首へと
丹念に施していくと、アキラはピタンと音を立てて後ろの壁に凭れ、目を閉じビクビクと
何度も膝を震わせた。
その中心に、早くも熱く昂りきったものが頭を擡げている。
アキラを大切だ、守りたいと日頃は思っているはずなのに、こんな姿を見せられると
つい嗜虐心がムラムラと湧いて起こり、言葉で突っついて苛めてみたくなってしまう。


(70)
「あー、もうそんなにしてもーて・・・・・・なんや今夜は、昨夜にも増してノリノリみたいやなぁ?」
「・・・・・・キミが、妙な揉み方をするからだろう・・・・・・っ?」
悔しげに声を詰まらせて、アキラがまた蹴りを放って来た。あっさりとかわして足首を捉え、
泡まみれの親指を足裏に滑らせてぐりぐりと刺激するとアキラが堪らず腰を浮かせる。
「オレ、何もしてへんでー。セッケンつけとる以外は昨夜とおんなじ、至って普通の
マッサージメニューや」
「嘘だよ・・・・・・」
コツン、と壁に頭を預け、息を乱しながらアキラは言った。
「ならどんな風に昨夜と違う?ゆうてみ」
足指の裏の付け根をくすぐりながら優しく促してやると、アキラは目を閉じかすれた声を
上擦らせて答えた。
「こんなやり方・・・・・・足の先から、痺れて・・・んっ、・・・・・・溶けちゃうよ・・・・・・」
「そら、足揉み師冥利に尽きる言葉やな・・・・・・」
乱れるアキラの姿態をじっくりと目に焼きつけながら、新たなボディソープを手に掬い泡立てる。

足首から脛とふくらはぎ、滑らかな膝と膝裏、太腿へ。
時折焦らすように手を戻しつつ、甘い香りの泡で白い脚を侵していく。
その間アキラは目を閉じ、陶然と呼吸を震わせながらされるがままになっていた。
ふと思いついて呼びかけてみる。
「なぁ塔矢。目ぇ開いてみてくれへん」
「え?・・・・・・」



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