マッサージ妄想 69 - 70
(69)
シャワーの水流が勢い良く浴槽を叩き、水色のカーテンに包まれた小さな世界を
温かな蒸気で満たし始める。
浴槽の縁にアキラを腰掛けさせ、その脚と向かい合う形で社は浴槽内に胡坐を掻いた。
目の前のアキラの脚は昨夜と変わらずすんなりと伸びやかなラインを描いて、その中心を
隠そうともしないまま無防備に開かれている。
昨夜あんなにも白く瑕一つなかった表面に、今は自分の残した赤い跡がいくつも散っていた。
その跡の一つ一つに昨夜の情景を甦らせながら、アキラの片方の足を取ってしみじみと眺める。
(ああ、この足や・・・・・・)
昨夜、次にはいつ触れられるかわからないからと目に焼きつけたアキラの足は、変わらない
温かさで自分の手の内にあった。静脈の透けた足の甲にそっと口づけてからボディソープで
滑りを良くし、昨夜と同じように先端から揉みほぐしていく。
「んっ・・・・・・」
アキラがもどかしそうに小さな身じろぎを繰り返す。
それを無視して泡を立てながら愛撫のような軽いマッサージを足指から足の裏、足首へと
丹念に施していくと、アキラはピタンと音を立てて後ろの壁に凭れ、目を閉じビクビクと
何度も膝を震わせた。
その中心に、早くも熱く昂りきったものが頭を擡げている。
アキラを大切だ、守りたいと日頃は思っているはずなのに、こんな姿を見せられると
つい嗜虐心がムラムラと湧いて起こり、言葉で突っついて苛めてみたくなってしまう。
(70)
「あー、もうそんなにしてもーて・・・・・・なんや今夜は、昨夜にも増してノリノリみたいやなぁ?」
「・・・・・・キミが、妙な揉み方をするからだろう・・・・・・っ?」
悔しげに声を詰まらせて、アキラがまた蹴りを放って来た。あっさりとかわして足首を捉え、
泡まみれの親指を足裏に滑らせてぐりぐりと刺激するとアキラが堪らず腰を浮かせる。
「オレ、何もしてへんでー。セッケンつけとる以外は昨夜とおんなじ、至って普通の
マッサージメニューや」
「嘘だよ・・・・・・」
コツン、と壁に頭を預け、息を乱しながらアキラは言った。
「ならどんな風に昨夜と違う?ゆうてみ」
足指の裏の付け根をくすぐりながら優しく促してやると、アキラは目を閉じかすれた声を
上擦らせて答えた。
「こんなやり方・・・・・・足の先から、痺れて・・・んっ、・・・・・・溶けちゃうよ・・・・・・」
「そら、足揉み師冥利に尽きる言葉やな・・・・・・」
乱れるアキラの姿態をじっくりと目に焼きつけながら、新たなボディソープを手に掬い泡立てる。
足首から脛とふくらはぎ、滑らかな膝と膝裏、太腿へ。
時折焦らすように手を戻しつつ、甘い香りの泡で白い脚を侵していく。
その間アキラは目を閉じ、陶然と呼吸を震わせながらされるがままになっていた。
ふと思いついて呼びかけてみる。
「なぁ塔矢。目ぇ開いてみてくれへん」
「え?・・・・・・」
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