マッサージ妄想 75 - 76


(75)
「・・・・・・すまなかった」
アキラが小さな声で言った。
「ん?」
「肩と顎・・・・・・」
「エエよ、オレもちょっと意地悪やった。ゴメン。・・・・・・あれでアンタも頭痛くしたやろ。
だいじょぶか」
こっくりと頷いてまた社に背を凭せかけ、アキラは深々と溜め息をついた。
蒸気と汗で濡れたアキラの背の感触が、昨夜湯の中にいるように抱き合った記憶を
鮮やかに喚び起こす。
「恥ずかしかったんだ」
アキラが唐突に言った。
「ん?」
「さっきの・・・・・・。キミの言葉だけで、その・・・・・・自分の身体があんな風になってしまう
なんて思わなかったから。恥ずかしくて、逃げ出したかっただけなんだ。キミの言葉が
嫌だったとか、そういうわけじゃないんだよ」
声を詰まらせてそれだけ言うと、アキラは耳を赤く染めて俯いた。
「ウン。・・・・・・そやけど、アンタは恥ずかしかったかも知れへんけど、オレは嬉しいで。
何かこう、気持ちが通じ合った感じがするやん」
自分はまだアキラを理解できていないし、アキラも自分を完全には頼ってくれていない。
それでも時折はこうして気持ちが通い合ったと思える瞬間が確かにあって、
それを積み重ねながら自分たちは少しずつ進んで行くのだろう。
昨夜から今日にかけて。そしてこれからもずっと。
(あ、なんか今めっちゃ挿れたい言うか、カラダ繋げたい気分かもやわ)
「なぁなぁ、塔矢。・・・・・・あのな、今日は口でしてもらうの無しで、このまま後ろほぐして
挿れさしてもろてもエエ」
振り向いたアキラは一瞬渋い顔をしたが、切羽詰った社の顔と目が合うと、ちょっと目を
眇めてから頷いてくれた。


(76)
ばらばらと浴槽に叩きつけられるシャワーの音すら、自分たちを煽っているように聴こえた。
男二人には狭過ぎる浴槽の中で、高い声と共にアキラの体重が腿と腰とに掛かるたび、
胡坐を掻いた膝や背中が浴槽と擦れ合ってごりごりと痛んだ。明日の朝には痣だらけになって
いることだろう。
(いくらでも痣になってくれたらエエ)
この一時を共に過ごした後はまたアキラのいない長い日常が始まる。
痣。肩の噛み傷。つややかな湯呑み。一晩だけアキラの身体を包んでいたシャツ。
そんなものをよすがにしながら、また来る日も来る日も自分の腕の中にいないアキラに
焦がれ続けるしか自分には手立てがないのだから。

「ん?塔矢、どした」
引っ切りなしに揺すられ切ない喘ぎを洩らしながら、アキラが懸命に身体を捩ってこちらを
向こうとするのに気づき社は一旦動きを止めた。
「・・・かお、」
「ん?」
小刻みに震える呼吸を繰り返す唇に耳を近づけてやる。
「顔が見えない、・・・・・・キミの顔が見たい」
「こうか」
濡れた肩に後ろから顎を密着させて覗き込み、しっかり視線を合わせてにっと微笑んでやると、
アキラも上気し汗に濡れた顔で嬉しそうに笑った。
切れ長の大きな瞳がキラキラと潤んで、もうその目に血の色を加えていたのが涙だったか
欲情だったかわからない。



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