白と黒の宴3 16
(16)
ヒカルはまたさっきのように大人びた目で真直ぐアキラを見つめて来ていた。
アキラはまさかヒカルからそういう話をしてくるとはまるで予想していなかった。
「…オレ、変なんだ…。」
「変って…?」
「お前の様子が何かおかしいなって気になっていたけど、それだけじゃなくて、
…上手く言えないけど、塔矢の事ばかり考えるようになっているんだ。」
アキラは全身から力が抜けそうだった。あまりに嬉しくて、今自分が耳にしている事が
夢のようで信じられなかった。
ヒカルが顔を寄せて、一言、小さな声で囁いた。
「…試してみたいんだ…。」
ヒカルのその言葉が意味するところを理解し、全身がカッと熱くなる。
鼓動が鋭くアキラの中で響き、胸が痛かった。
今までのお互いを言葉ではまだ言い表せない想いを触れあわせる程度だったものから
一歩踏み出そうとしてくれている。ヒカルの方からそれを決意してくれたのだ。
それはヒカルの優しさだと言える。
北斗杯予選の後のアキラの愚行を、自分からそう言い出す事でアキラの気持ち的な負担を
減らそうとしてくれているようにも思えた。
「いいよ」と答えたかった。ヒカルに好きなだけ試させたかった。
自分がどんなにヒカルの事を思っているのか感じて欲しかった。
だが、アキラの唇はそう綴る事は出来なかった。
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