白と黒の宴3 17
(17)
「…ダメ…なんだ、明日は…都合が…」
今の自分の体を、ヒカルに見せる事は出来ない。
「…あ、そ、…うなんだ…。」
一瞬ヒカルは、重大な決意が空振りに終わった落胆を隠せないような
がっかりした顔になった。そしてすぐに頭を掻きながら照れくさそうに笑った。
「…へへ、何焦ってンだろうな、オレ。」
「ごめん…」
「塔矢が謝る事ないよ。うん、ちょっと突然だったし。」
胸が詰まって泣きそうになる。ヒカルが不安げにこちらを見つめる。
ヒカルのそういう顔を見ていると、本当の事を全てぶちまけたくなる。
でも、それだけはしたくない。
自分でも自分の表情が固く閉ざされて行くのが分かる。
「進藤、…今ボクたちは、やはり北斗杯の事だけに集中するべきじゃないだろうか。」
そう言って、心底自分で自分が嫌になった。
ここまできて頭の片隅に、ヒカルの中にある自分のイメージを壊したくないという
保身の意識が働いているのだ。
「わかった。そうだな。…今日はオレ、あっちの碁会所に行くよ。頭冷やす。
じゃあな。」
そう言って駆け出すヒカルの後ろ姿を見送って、アキラは大きくため息をつき、
髪をかき上げた。何かを決意するように固く目を閉じて唇を噛んだ。
緒方の事は終わった。
だが合宿の前に、どうしてももう一つ区切らせておくべき事があったからだ。
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