白と黒の宴3 19
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『久しぶりやな、塔矢!オレや。元気やったか。』
それはアキラが戸惑う程に親しい友人に話し掛けるような明るい口調だった。
「…ちょっと話があるんだ。でも、…もしかして近くに御家族の方が?」
『いや、子機や。夜はオレが自分の部屋でとっとる。親はもう寝とる。』
電話の社の声は、本当に喜んでいるように上機嫌なものだった。
『へへ、エエもんやなあ。好きな相手から電話がかかってくるゆうのは。
嬉しいなあ。びっくりした。…あんたの声、聞きたかったんや…。感動的や。』
アキラはため息をついた。受話器を床に叩き付けようかとも思ったが、
そんな気持ちを抑えて話を戻した。
「…合宿の事なんだが…。」
『ああ、進藤から聞いた。…ちょっと東京に行く話を進藤にしたらこうやもんなあ。
お前ら、ホンマに仲エエんやな。…合宿が楽しみや。』
社の言葉には皮肉が込められていた。明らかに自分がヒカルに接近しようとする事で
アキラの反応を楽しもうとしている。
「いいか、社…」
アキラは語調を強めた。
「ボクは北斗杯に全てを賭ける事にした。棋士として、もう一度自分を見つめ直すために。
だから君にお願いしたい。北斗杯が終わるまで…そして、合宿中も変なマネを一切しないで
貰いたい。もしも進藤やボクに何かしたら…その時は、ボクは代表を降りる。」
電話の向こうは沈黙した。
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