白と黒の宴3 20
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「…君が何かしたら…倉田さんに今までの事全てを話して、相談に乗ってもらうつもりだ…。」
迷ったあげくの結論だった。ヒカルがまだ社に何もされていない今なら、
一切ヒカルに迷惑がかかる事はない。
ヒカルが自分の事を思ってくれていると言った。そのために決意をしてくれた。
それで充分だった。
沈黙は暫く続いた。
『…わかった。』
さっきまでの口調と変わって、静かに社は応えた。
『ただ…』
社が口にする言葉の予想はついていた。その覚悟もしていた。
『だったら、もう一度二人で会いたい。…合宿前に。それやったら…』
「わかっている。いいだろう。ボクがそちらに行く。」
『塔矢…』
「ボクが、大阪に君に会いに行くよ。」
新幹線の改札口まで、社は迎えに来ていた。
ほとんど荷物らしい荷物のないアキラをしげしげと眺めて来る。
黒の薄手のセーターに白いチノパンのアキラは独特の中性的な雰囲気を漂わせ、
夕方のラッシュには少し早い時間帯の同じように待ち合わせをする人々の中の
幾らかの関心を集めた。
待ち合わせの相手の社を見て、アキラを女性だと早合点する者もいたようだった。
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