白と黒の宴3 22


(22)
今日のアキラは今までと様子が違う、と社は感じていた。
東京の碁会所でアキラと打った時、負けはしたが社は本気を出し切っていなかった。
それは相手のアキラがどこか集中力を欠き、本調子ではなさそうだったからだ。
普段補食する側の肉食獣といえ、覇気を失い攻撃的な構えを解いてしまえば
補食される側にまわる。
そうして社は、その機を逃さずアキラを捕らえた。
いや、捕らえたつもりだっただけかもしれない。
『君は塔矢アキラという人間が分かっていない。…抱いただけでは彼を手に入れる事は
出来ない。』
緒方の言葉が社の頭の中に蘇る。
何か得体の知れない嫌な予感が広がるのを振払うように社は頭を振る。
「望むところや。…受けてたったる。」
社はアキラを先導するように前を歩こうとした。するとアキラが言葉を続けた。
「場所は…普段、君が行っているところじゃない碁会所にしておいた方がいい。」
その言葉が意味するところを察知して社は振り返り、アキラを睨んだ。
「…塔矢アキラが本気を出せば、社清春などひとたまりもないって事か。」
アキラは黙って涼し気に社を見返している。
見下されているような気がして社の中に怒りが込み上げ、アキラの胸元を掴んで引き寄せる。
通行人が驚いて振り返り、足を止める。
それでもアキラは眉一つ動かさず冷静に社を見上げていた。



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