白と黒の宴3 23
(23)
「お前は勝敗とSEXは関係ない言うたが…勝ってやる。勝って…めちゃくちゃになるまで
お前を抱いてやる。」
社は小声でそう呟くとアキラを突き放し、歩き始めた。
電車を乗り継ぎ、社が向かった先は商店街から少し離れた古いビルの地下にある
碁会所だった。
薄暗い階段を降りると準備中の札がドアに下がったスナックと並んでその入り口はあった。
席亭は意外とまだ若い男で、社を見ると愛想良く笑顔を見せた。
「いらっしゃい。」
「…どうも。ちょっと友だちと打ちたいだけやから。」
ボソリと社は言うと受付のテーブルに記帳し、二人分の料金を置く。
若い席亭はアキラを見ると同じように笑顔で頭を下げる。
塔矢アキラだと分かっているのかもしれないがそれを顔に出す様子はなかった。
そんなに広くない室内に無愛想な事務机と椅子が並んでいて
奥でサラリーマン風の中年男性らの一組だけが打っていた。
時間からして、外回りから会社に戻らず直接打に来たと言ったところだろう。
ちらりとこちらを見たが、特に反応する様子はない。
「2〜3回来ただけのとこや。静かでええやろ。」
「…そうだね。」
カウンターの後ろには読み込んだ囲碁関係の雑誌や新聞が山積みになっていて、
席亭もプロの社やアキラを知らない訳ではないだろうが、あえて意識しない振りを
してくれているようだった。
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