白と黒の宴3 24


(24)
最初にお茶を運んだ以外は席亭の男は近寄ってこそ来なかったが、自分の碁会所の
一角で静かに凄まじい戦いが始まるのを予感し、見守ろうとしているようだった。
しばらくしてドアが開き、新たにやって来た中年男性の2人連れが社らの方を
見て「最近は若いモンも碁を打つんかい」と尋ねるが、
「そうやって流行ってくれるとありがたいんですけどね。」と軽く答えるに留めた。
その席亭からは背を向けたアキラと、その向いに座る社の顔が見えていた。
互いが向き合い、何か言葉を交わした時、社がガタッと大きな音を立てて立ち上がった。
そしてまた言葉を交わし、社が席に座った。
カウンター近くに座った中年男性らがぼそぼそ話し合い、やれやれといったように
首を振る。
だが席亭には彼等の会話が僅かに聞こえていた。

「石を置け、やと…!?」
「2子だ。今の君の実力から言ってそれが妥当なとこだ、社。」
「…随分強気なようやけど、それで負けた時の言い訳にする気やないやろな…」
「…打ってみれば、はっきりする…。」
アキラが白石を持ち、盤上に静かに置く。

席亭は社の表情から燃え上がる闘争心を見て取ったが、それ以上に
背中を向けているアキラから、なんとも言えない威圧感を感じていた。
奥で打っているサラリーマンらも、手前の中年男性らも趣味程度で打っているだけの
者たちには嗅ぎ分けられない程それは静かで、底知れない気迫だった。



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