白と黒の宴3 28
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部屋のドアを開けて、アキラはこういう類の場所はどこもそう違いはないのだと
思った。部屋の一角を占めるバスルームは壁の一部がガラスになっていて
ベッドから中が見えるようになっている。
小さなバッグを部屋の中の安っぽい小さなソファーの上に置き、後ろを振り返ると
社はドアの所で立ち止まったままじっとアキラを睨んでいた。
入り口のドアのすぐ傍にバスルームへのドアがある。
「…先にシャワー、浴びさせてもらうよ。」
アキラは社の方に近付くように歩き、左に折れてバスルームへのドアに手を掛けた。
そのアキラの手を掴むと社はアキラの体を壁に押し付ける。
そのままアキラと睨み合う。
歯噛みをしながら社は何か小さく口の中で呟いていた。
「…てやる…」
壁に押し付けてアキラの腕を握る手に力が入り、アキラが眉を顰める。
そのアキラの顔をもう一方の手で荒々しく捕らえる。
「…絶対…追い付いてやる…」
社のその言葉に、一瞬フッとアキラが可笑しそうに笑んだ。
ヒカルと初めての、そして二度目の対局の後自分もそう念じた。ヒカルもそうして自分を
追って来た。そうしてここまで登って来たのだ。ヒカルと2人で。
「…追い付けるのかな」
アキラの挑発的な言葉に激高したように社が激しくアキラの唇を奪って来た。
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