白と黒の宴3 31 - 35
(31)
そんなアキラの上半身にすがりつくように覆いかぶさり、動きを制して
社は執拗に両の突起を責め立てた。
「んん…っ」
「相変わらず、感度は抜群みたいやな…」
自分が与えたものにアキラが従順に反応する事に社は少し安心し気を良くした。
相手が誰であれSEXを重ねた事でアキラの感覚は開発され、そういう刺激に
敏感に肉体は呼応し、責められれば責められる程快楽に結びつくのだろう。
実際、アキラの肉体は充分刺激に対し明らかな形状の変化を起こしていた。
今後も自分は好きな時にこいつを味わえるのだ、そう社は信じたかった。
だが皮肉混じりの社の言葉にもアキラは表情を変えなかった。
呼吸こそは甘く切なく漏らすが、視線は相変わらずどこか遠くに放たれているままだった。
業を煮やしたように社はアキラの手首を離すと手を下に伸ばしてアキラの
ズボンのボタンを外し、ファスナーも下ろして下着の中に手を入れて探った。
「…?」
違和感を直ぐに感じた。怪訝そうな顔つきでアキラを見つめながらその部分を弄る。
そして体を起こすとアキラの下肢から下着ごと衣類を剥いだ。
緒方によって性毛を処理された局部が露になった。
「…!!」
驚き、食い入るように社はアキラのその箇所を見つめる。
アキラはただ黙って先刻まで与えられた余韻に乱れた息を繰り返し横たわっていた。
(32)
「…なんでや…」
社は唇を噛み締め、手で自分の髪を掻きむしった。
「…これも…あいつやろ…、緒方…、あいつしかおらん…。進藤は…あいつはガキや、
…こんな…こんな事できるわけない…」
まるでブツブツ独り言のように社は言葉をくり出す。
「なんでや…?塔矢アキラが…お前ほどの奴が、何でこんな事させるんや!?
こんな風に…好き勝手に…、緒方は、一体お前の何なんや…!?」
そう言いながら社は手の平をアキラの体に這わせる。
毛を剃られた跡や、その周囲、アキラの体に残る痕跡を辿るように撫でていく。
「お前と緒方との対局も棋譜を見た。お前は間違いなく緒方を追い詰めとった。
緒方とお前の実力にそんなに差はない。いくら兄弟子かもしれんが…、
なんでそこまであいつの言いなりになっとんのや…!。」
社はアキラの腕を掴み、強く揺さぶった。
間があって、アキラはぽつりと答えた。
「…でも、緒方さんはボクに勝った…。」
社が言葉に詰まる。アキラは続けた。
「進藤も、ボクに3度勝っている…。」
「え…!?」
社は信じられないというような表情になった。
敢えて「3度」と言ったのはアキラにとってsaiの正体はヒカル以外の何者でも
なかったからだった。そして、次の瞬間、再びアキラは社を射るように見た。
「…君はどうなのかな、社…。」
(33)
顔色を完全に失ったのは、今度は社の方だった。
「社、東京の碁会所で初めて君と打った時、確かに君の持つ碁のセンスに
感心し、強く惹かれた。君が真剣に打っていれば、あの碁はもしかしたら君が勝って
いたものだったかもしれない。だけど、ボクだって君が本気で向かってきたもの
だったら死に物狂いで勝ちを奪いに行っていた。…もしもあの一局だけで
ボクを手に入れられるつもりになっていたとしたら…、」
「…黙れ…」
色を失った社の唇が震えていた。
「そのつもりになっていたとしたら、それは大きな誤解だとわかっただろう。
今日の一局で思い知ったはずだ。北斗杯予選で本当は気付くべきだったんだ。
ボクにも進藤にも大きく劣るという、自分の実力に…」
「黙れ!!」
社は手の平でアキラの口を塞ぐと、そのまま片手をアキラの下肢の奥に突き込む。
体をアキラの両足の間に割り入れて開かせる。
「っ!!」
社に塞がれた状態でアキラは目を見開き、次に苦痛に表情を歪ませる。
社の指が乱暴にアキラの体をこじ開けて体内に侵入し、内壁を弄りだしたのだった。
そうして2〜3度指を突き入れては抉り、抜き、また突き入れると
今度は社は自分自身の先端を底に宛てがい、力任せにアキラの内部に埋め込ませた。
(34)
アキラの悲鳴を聞いたわけではない。
アキラの上半身に縋り付き、アキラの胸に顔を押し付け、社はただ夢中で突き貫いた。
社自身にも痛みが走ったのだから、アキラが受けた苦痛は相当なものだったはずである。
じんと、先端に鈍い痺れのような感覚を感じながら、社は2度3度とアキラの中を抉った。
アキラの両膝が社の腰を強く挟み込んでガクガクと震えていた。
黙らせたかった。
自分の存在が塵に等しいような言い方をする、体の下に組み敷いたはずなのに
誰よりも遠い存在であるかのような目で見る相手に自分を思い知らせたかった。
痛みを与える事で。
荒い吐息に混じって呻き声が聞こえる。
さすがにやりすぎたかと思い、社はアキラの表情を見上げた。
そして息を呑んだ。
社がそこに見たものは、頬を紅潮させ、苦痛に歪むというようりは、
激しい行為に歓喜し恍惚として快楽に喘ぐ、妖しいほどのアキラの媚態だった。
「はあっ…あ…」
苦痛も当然あっただろう。固く目蓋を閉じた為にアキラの睫毛は濡れて
確かにアキラの下肢は小刻みに震えていた。だが、胸元を仰け反らせて僅かに
腰を浮かせ、更なる動きを社に求めているようだった。
「くっ…!」
社は首を振って激しく腰をアキラに打ち付けた。
(35)
そんなはずはない。アキラは苦しんでいるはずだ。
耐えられない目に合って今に泣きながら「やめて」と許しを乞うはずだ、
社はそう思いたかった。だが。
「うあっ、…あっ…!」
ビクンとアキラの体が強く震え、社の希望に反した反応がアキラの身体に起こっていた。
体を繋げた近くで熱いものが迸る。
「あ、あ…、はあ…っ」
見開いた社の目の前に頂点に達して片手で額に手を起き、切なく吐息を吐き出す
アキラが居た。
髪を頬に張り付かせ、額に当てた手の下で目を閉じ吐息を漏らす唇から赤い舌が出て、
ゆっくり上唇を舐める。そして目蓋が開き、動きを止めた社を見る。
『…どうした…?』
アキラの唇がそう動いた訳ではなかったが社にはそう聞こえた。
『…もっと激しくしてかまわないよ…その方が…』
社は初めて、自分が抱いているその相手の本当の姿をようやく見たような気がした。
『いや、…そうでなければ…今のボクは満足できないんだ…』
涼しげな清らかな表情からは想像出来ない、アキラが内面に抱える闇のようなものの
深さを、色濃さを社は理屈でなく肌で感じた。背筋に冷たいものが奔った。
それでもその相手を、魔物であるかもしれないその相手を社は手放したくなかった。
アキラの胸にしがみつき、夢中で腰を動かした。
|