白と黒の宴3 40
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別の席でやはり時間を潰している大学生風の男の3人連れは、
それぞれ雑誌や新聞を読みふけっていて、1人はうとうとうたた寝をしていた。
あとは数組のカップルや夫婦連れだ。
こういう店をあまり利用した事がないアキラは、深夜に関わらずごく普通の人らが
こうして過ごしているのを興味深げに眺めていた。
だが、会話をする訳でもなく、食事をするわけでもないアキラ達の方が彼等には
異質に映っているかも知れない。
「…食べなくて、平気なのかい?」
ホテルを出てからの会話らしい会話としてはそれが最初の言葉だった。
結局昨日は夕食を摂っていない。
アキラはそれこそ食欲がほとんどなかったが、以前の大食のイメージがある
社はどうなんだろうと思った。
社は黙ったまま俯いている。
アキラにしてみれば、また社の気が変わってまた別のホテルに連れ込まれる
可能性もあった。
それならそれでも構わなかった。ただ、ひどく疲れていた。
その割にさっきから妙に冷静に物事を考えてしまう自分が可笑しかった。
ベッドの上で途中から社の様子が変だったのには気付いていた。
何故なのかアキラには分からなかった。
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