白と黒の宴3 42
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新幹線のホームまで社は見送りに付いて来た。
既に構内はスーツ姿のサラリーマンが多く見える。
ただ、前の時のようにアキラの肩を抱いたりはせず、少し離れて歩いていた。
そしてアキラがデッキに乗り込もうとした時、社が小さな声で問い掛けて来た。
「…なんでや…」
アキラが社に振り返った。
「…なんで、大阪まで…わざわざ…、別にそこまでせんでも…」
社は両手をズボンのポケットに突っ込んだままだった。
そうでもしていないと、アキラを行かさまいと捕まえてしまいそうなように。
「少しは、…少しはオレのこと…」
返答に困ったようにアキラは社を見つめ、笑んだ。
「…ボクにも、分からないんだよ、社。ただ…」
ほぼ同時にけたたましく長い発車ベルが鳴り響いた。
アキラがデッキに移動し立つと、騒音の中で社に伝えた。
「…社、君ともう一度向き合わなければならないと思った。それは確かなんだ。」
社が引き寄せられるように一歩前に出た。
それを遮断するようにして、ドアが閉まった。
向き合うというのが碁だけなのか、それ以外のものを含めてなのか、アキラにも分からなかった。
ドアの窓越しにもう一度社を見た。
「北斗杯…、がんばろうな。」
社の口がそう動き、アキラは頷いた。
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