白と黒の宴3 43


(43)
指定の席に着くとアキラは後ろの人に軽く頭を下げてシートを深めに倒し目を閉じた。
ベッドの上で、自分の胸に社が顔を押しけ唸るように言っていた。
『…強く…なってやる…、誰よりも…お前よりも…』
緒方もまた、同じような事を言っていた事があった気がする。
アキラを抱き、髪を指で梳きながら呟いていていた。
『こうしていても、ついさっき打った棋譜を思い浮かべてしまう。
強くなりたい。…悲しい程に、オレ達はそれから逃れられない…。』

どんな事よりも、盤上の戦いが優先する。
どんな快楽よりも、白と黒の石によって相手に打ち勝った時の快楽の
美酒以上には酔えない。
それを一度知ってしまった者は引き返せない。それを確認するために社と会った。
ヒカルと共に歩むために。行けるところまで。どこまでも行き着く処まで。
盤上の上にあるべきは白と黒の石のみ。
永遠に戦いあい高め合うヒカルと自分の存在のみ。
それ以外のものは要らない。
そのままアキラは深い眠りに落ちた。

東京駅に降り立った時、アキラの表情にはもう何の迷いもなかった。
その数日後、アキラは東京の自宅で社と再会した。



TOPページ先頭 表示数を保持: ■

Gポイントポイ活 Amazon Yahoo 楽天

無料ホームページ 楽天モバイル[UNLIMITが今なら1円] 海外格安航空券 海外旅行保険が無料!